キンドルが変える! 出版業界の“旧秩序”《アマゾンの正体》
図書館の片隅に置かれていた著作権の切れた本を、全米の図書館と協力し合い、デジタル化を進めてきたのがグーグルだ。そのコンテンツを「携帯端末、電子ブック、コンピュータ、ネットブックなど、すべてのデバイスで読めるようにする。パートナープログラムとしては、オンライン書店や実際の書店を通じて、グーグル版のデジタル本をダウンロード販売、もしくは印刷して販売できるような方法も探っている」(クランシー氏)。
追い込まれたB&Nも反攻へ乗り出している。7月20日、デジタルコンテンツのダウンロード販売を開始。全米に777店ある同社書店内の無線LAN接続を無料化し、ノートパソコンや携帯電話端末を持ち込んで専用サイトにアクセスすれば、ダウンロードを試せるようにした。「デジタルコンテンツの販売には、巨大な市場機会がある」とB&N・コムのウィリアム・リンチ社長は言う。「読書経験が豊富な7700万人がわれわれの顧客。パソコン、スマートフォンなど既存の端末のほか、専用電子ブック端末でも読めるようにする。そして、他社にはない豊富なコンテンツを提供できるように注力する」。
B&Nが来年1月に発売予定の専用電子ブックの開発で提携したのは、シリコンバレーのベンチャー企業「プラスティックロジック(PL社)」だ。インテルから2億ドルの投資を受けたPL社製の電子ブックには、米通信大手のAT&Tワイヤレスが3Gの携帯通信ネットワークを提供する予定だ。
遠隔操作で消されたキンドルのコンテンツ
主に3社が激突する電子ブック市場。だが、主導権を握っているのはアマゾンだ。アマゾン一強に向かうとの見方は強い。
ところが、この夏、電子ブックビジネスの先行きに不安を抱かせる問題が発生した。7月、アマゾンがキンドルにダウンロードされた、ジョージ・オーウェル著の『1984』『アニマル・ファーム』を削除したのだ。アマゾンは「キンドル向けダウンロードを止めたい」という著作権保有者の要望に応じ、遠隔操作によりコンテンツを完全に削除。購入代金を返金する手続きを取った。アマゾンのこの処置に対し、一方的にコンテンツを奪われ、読書中の書き込みも消えたことに憤慨した一部の消費者からは、激しい抗議の声が上がった。一方で、著作権保護の観点からアマゾンの動きを擁護する者もおり、反応はさまざまだ。