過去最高!「Gショック」ブーム再燃の裏側

5万円前後の「大人価格」が売れている

その後、1990年代に入りアメリカ西海岸のスケーターたちに支持され、彼らのストリートファッションが日本の雑誌で紹介されたことを機に若者の間で人気に火が付いた。1997年には、過去最高となる600万個の出荷を達成。ところが、ここをピークに急激に失速し、2001年には売上が3分の1まで落ち込んでしまった。齊藤さんは、当時のブームをこう振り返る。「カラーバリエーションや限定モデルなどファッション性で流行していたので飽きられた。また、海外モデルの多くを外国に出かけた日本人が買っていて、海外での売り上げも実質的に日本人消費だった」。

「タフネス」への原点回帰

このブーム終焉の猛省から、カシオは改めて「タフネス」の追求に注力した。「落としても壊れない丈夫な時計」――Gショックプロジェクトは、開発者の伊部菊雄さんが提案書に書いたこの一行からスタートしたというが、この原点がブランドのアイデンティティであると再確認したのだ。耐衝撃性はもちろん、機能、外観、素材、操作性とあらゆる側面から見直しを図り、「タフ」を追い求めた。

また、世界の時計市場の9割がアナログということもあって、カシオは10年ほど前から全社的にアナログへのシフトを進めており、今ではGショックも7割をアナログが占めるそうだが、この戦略も当たった。「もともと得意なエレクトロニクス技術をアナログに組み込むことで、他にはない時計になった」(齊藤さん)。こうした背景から、新たなファンを一気に増やした電波ソーラーを始め、今回紹介した売れ筋モデルに搭載されているような様々な機能が生まれていったのだ。

「タフネスは必ず進化させていく」と語るカシオ計算機、齊藤慎司さん(撮影:尾形文繁)

高機能・高価格の大人向け商品を強化する一方で、プロモーションにも注力した。2008年から若者カルチャーと関連させたイベント「ショックザワールド」を世界各地で展開。目的は、「タフネス」を再訴求してブランド価値を確立することだ。伊部さんが開発ストーリーを語るなど「Gショックとは何か」を伝える前半と、Gショックファンである現地アーティストのライブを行う後半の2部構成で、重要なファン作りの場になっている。

このように、色々な方向から地道にまいた種が開花し、Gショックは復活を果たしたという。過去、時計事業の年間売り上げは、Gショックブームを除けば700億円あたりを推移していたが、Gショックの復活が牽引し、2014年度は1530億円と過去最高を記録。第一次ブーム時とは売れ方も代わり、今は特定の国に偏ることなく全世界で売れるようになったそうだ。

ブームによる浮き沈みを経験した若手が今は上に立つ世代になり、当時の教訓は下の世代に受け継がれているという。そして今も昔も変わらないのは、風通しの良さ。営業、デザイナー、技術者など、様々な担当から企画の声が上がる。時計事業部の共有意識について、齊藤さんはこう語る。「タフネスは必ず進化させていく。また、『面白いかどうか』という視点も大切にしています」。

2013年に30周年を迎えたGショック。そういえば、筆者の父も夫も愛用者だ。今3歳の息子も10代になる頃にはGショックを欲しがったりするのだろうか。これからも世代や国境を越え、100年ブランドへと進化していくタフネスを、私たちに見せ続けてほしい。

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