「禁書」の真実をどれだけ知っていますか この蘊蓄100章は人に話したくなる

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21. 2002年にはアラブ首長国連邦でも発禁処分を受けているが、同作家の『1984年』も問題作とされている

22. 1940年ピューリッツア賞に輝いた米国人作家ジョン・スタインベックの『怒りの葡萄』

23. 農地が耕作不能となり故郷オクラホマを追われた一族の物語だが、実は米国各地で発禁処分を受けている

24. 作品の舞台の一部となっているカリフォルニア地域の住民を悪し様に描いているというのがその理由だ

人種差別問題へと発展したことも

25. アンナ・シュウエルの小説『黒馬物語』はタイトルに〈black〉がついているとして1955年南アフリカで発禁

26. マーク・トゥエインの名作『トム・ソーヤの冒険』の続編として描かれた『ハックルベリー・フィンの冒険』

27. 無邪気で幼い主人公ハックと黒人奴隷であったジムの冒険を描いた作品だが〈nigger〉という言葉が問題に

28. また暴力表現やアメリカ南部の白人の描写にも問題があるとして発禁処分を受けている

29. スコットランド人へレン・バンナーマンが描いた『ちびくろサンボ』は作家の意志に反して発禁にされた作品

30. 当初『ちびくろサンボ』はヘレンが自分の子どもたちのために制作した手作り絵本であった

31. それがイギリスの出版社に紹介され1899年に英国版が出版。ところがアメリカで海賊版が横行してしまう

32. インド人少年だった主人公はアメリカに住むアフリカ系黒人に勝手に置き換えられ、内容も改悪

33. そこから人種差別問題へと発展し、イギリス、アメリカのみならず日本でも発禁や絶版・回収が続いた

34. ロシア革命に翻弄される恋人たちを描いた大河小説『ドクトル・ジバゴ』は当初イタリアで刊行された

35. 舞台のソ連ではボルシェビキ党への批判が含まれているとして1988年まで販売することができなかった

戦後ヒトラー讃美に繋がる出版物が規制となり、発禁となっていた『我が闘争』。 しかし、ナチ党のヒトラー政権下、ナチズムの思想に合わないとされた書物が、儀式的に焼き払われたナチス・ドイツの焚書もまた有名。(イラスト:Steve Allen / PIXTA)

36. アドルフ・ヒトラーの政治論『我が闘争』は1925年に1巻が発売されたが現在は反ナチス法により発禁処分

37. しかしドイツ、オーストリア、オランダでは歴史を知るためにこの書籍を販売する場合は可能とされている

38. 2003年に日本で出版され、その年のベストセラー書籍となったコミック『マンガ金正日入門』(李友情)

39. 当時、北朝鮮の最高指導者であった金正日を資料と証言をもとに描いた作品だが韓国では発行直後に発禁に

40. 世界最初の近代的性愛文学といわれる『ファニー・ヒル』(ジョン・クレランド)は1749年にイギリスで発禁

41. アンダーグラウンドで売買されアメリカに渡るが、1821年と1963年の二回に渡り米国でも発禁になった

42. 1934年にパリで発表されたヘンリー・ミラーの『北回帰線』も1930~60年代までアメリカでは禁書だった

43. 1930年代のフランスの日常を描いた処女作だが、性的にあからさまな描写があり俗悪というのがその理由

44. イギリスの小説家D・H・ローレンスが1928年に発表した『チャタレイ夫人の恋人』も猥褻性で問題に

45. 男爵夫人となったチャタレイが性的不能な夫の代わりに森番と恋におちる物語だが英国・米国で出版禁止に

46. 日本では伊藤整が翻訳したが、その出版に関して最高裁まで争うことになり「チャタレイ事件」と呼ばれた

47. 『悪魔の詩』はムハンマドの生涯をテーマに、英国人作家サルマン・ラシュディが1988年に発表

48. イギリスでは同年のブッカー賞候補になりホワイトブレッド賞の小説部門も受賞した

49. しかしムハンマドの12人の妻たちと同名の売春婦が登場するなど、ムスリム社会から激しい反発を招く

50. 結果インド、シンガポール、バングラデシュ、イランでは「神への冒涜があった」として発行禁止に

51. 翌89年には当時のイランの最高指導者ルー・ホッラー・ホメイニが、著者と出版関係者に死刑を宣告

52. 著者ラシュディはイギリス警察に厳重に保護されたが、ホメイニの死後も彼の死刑宣告は撤回されなかった

53. 1991年には日本語版を翻訳した筑波大学の五十嵐一が校内で刺殺され「悪魔の詩訳者殺人事件」と呼ばれる

54. この事件は2013年現在も未解決のままだが、イタリアやノルウェーでも訳者が襲撃される事件が相次いだ

55. ハリウッドで映画化され話題を呼んだ小説『ダ・ヴィンチコード』(ダン・ブラウン)も宗教的問題に発展

56. 出版後、カトリックの指導者が「本書はキリスト教への攻撃である」と見解しレバノンでは発禁処分となった

57. 日本では江戸時代から木版による出版が盛んになるにつれ、江戸幕府が検閲に乗り出すようになった

58. 初期はキリスト教や幕政批判、徳川氏の事績に関するものが中心だったが「寛政の改革」以降対象が広がる

59. 1787年から松平定信によって進められた寛政の改革では風俗を乱すものや、贅沢な出版物も取り締まられた

60. 全16巻からなる林子平の政論書『海国兵談』は海防の充実を唱えるものだが、幕府批判として版木が没収

次ページ検閲を行なうには法律の根拠が必要になるが
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