波瀾の時代の幸福論 マネー、ビジネス、人生の「足る」を知る ジョン・C・ボーグル著/山崎恵理子訳~信頼される人格こそ「成功」の源と説く
本書は、インデックスファンドの創始者で米国金融界の重鎮でもある著者が、自身の経験をもとに、他の賢人たちの言葉も多数引用しながら、真に幸福な人生を送るにはどうしたらよいかについて、その明確な道筋を示した好著だ。
著者の主張は明快だ。今回の金融危機は、マネー資本主義の横行を助長していた歪んだ価値観とモラルの欠如によってもたらされたものであり、特に金融業界人は古きよき時代の正しい価値観や倫理規範を一刻も早く取り戻す必要があると説く。この点については、評者もかねて著者と同様の意見を持っており、共感を覚える。
かつて日本にも「おカネで買えないものは何もない」と豪語した輩がいたが、世の中におカネで買えないものはたくさんあるし、おカネで人の価値は測れない。また、高いモラルの維持は「まともな」社会には不可欠だ。
著者の「成功」の定義も素晴らしい。「自分のために何をなすかではなく、社会のためにどんな貢献をするか」であり、決して自分さえよければ他人はどうでもよいという話ではない。やはり大切なのは「人格」や「人間性」なのだ。
著者は金融業界に長年身を置いてきただけに、身内に非常に厳しい。彼によれば、現在の金融システムはデリバティブ等のイノベーションにより複雑化させることによって、膨大なコストを顧客である投資家に転嫁している。このコストが一部の連中の莫大な報酬につながっており、投資家はコストを差し引いたリターンを見るべきと警鐘を鳴らす。