波瀾の時代の幸福論 マネー、ビジネス、人生の「足る」を知る ジョン・C・ボーグル著/山崎恵理子訳~信頼される人格こそ「成功」の源と説く

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 また、自身の属している(ミューチュアル)ファンド業界に対する批判も容赦ない。現在のほとんどのファンドは短期的な投機を行っており、顧客(投資家)のことを考えず、マーケティングや販売にばかり力を入れ、暴利をむさぼっているとし、「受託責任」の大切さを指摘する。

ビジネス上で何でも数字に置き換えて損得勘定を測る風潮への批判も大いに賛成だ。世の中に数字で測れないものはたくさんあるし、著者の指摘のように「信頼」はそうした中で最も大切なものの一つだ。

すべての人が、今こそこうした賢人たちの言葉に真摯に耳を傾ける時だ。金融従事者は是非本書を熟読して猛省し、「基本に戻る」ことを考えるべきだろう。特に相変わらず「受託責任」を省みず、リスクのある投資を続ける年金ファンドの連中にとって必読と言ってよい。また個人の資産形成の観点でも、金融機関の言いなりにならずに「本質を見極める」目を養い、賢い投資を行ううえで、本書は大いに参考になるだろう。

ランダムハウス講談社/1680円/222ページ

John C. Bogle
ボーグル金融市場リサーチセンター所長。1974年にバンガード・ミューチュアルファンドを設立し、96年まで会長兼CEO、2000年までシニアチェアマン。『インスティテューショナル・インベスター』誌からライフタイム・アチーブメント賞受賞。

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