大塚家具を去った創業者が描く第2章の勝算 二極化が進む家具業界、高級市場を攻める
野澤氏はもともと不動産業に従事しつつも、英国高級スポーツカーを販売するアトランティックカーズ、そして大型のクルーザーを輸入販売及びオーダーメイドで製造も行う安田造船所のオーナーとなった。その彼が“ライフスタイル提案の達人集団”と評する蔦屋との共同事業として今回このB&B Italia の日本代理店を設立した。
幅広い顧客を持つ従来の蔦屋書店は、従来の店舗戦略とは異なった、より高年齢層、高所得者層をターゲットとした代官山蔦屋や蔦屋家電などの展開を積極的に進めている。B&B Italiaの展開は、この戦略に沿う流れとも言える。
青山のレクサスショールームに隣接して設けられたB&B Italiaのショールームは精力的に活動を続ける池貝知子氏によるコーディネートにより、まさにラグジュアリー空間たる提案が行われている。
ここでは前述したヨーロッパなどにおける流れや匠大塚などのセレクトショップ的発想ではなく、ハイエンドな価格の単一ブランドの展開が行われる。
単に家具を売るのではなくライフスタイルを提案
「私は家具を売っているつもりはないですし、高級家具マーケットの中でシェア争いをするつもりもありません」。野澤氏は語る。世界トップレベルのクルーザーやスポーツカーを販売し富裕層のコミュニティを持つ野澤氏へB&B Italiaが日本代理店のオファーをしたことからこの話は始まったらしい。
野澤氏もその一流デザイナーたちの手によるクオリティにこだわったモノづくり、そして飽きることなく次世代へも引き継げる存在であることでブランドの魅力にハマったという。確かに手軽に買うことのできるブランドではないが、「100万円のバッグを簡単に買うのに、何十年も使える椅子に100万円は高いと感じてしまうのも考えてみればおかしいでしょう」と野澤氏が語るように価値観を見直してみる必要もある。
つまりB&B Italiaも単に家具を売るのではなくライフスタイルを提案し、より満足感を生み出すためのツールとして存在するということだ。靴や時計、車と同様にその人なりのこだわりをもった家づくりを行う。そういう時期に日本もきていると彼は判断した訳だ。
「ゲストを呼んでもてなして楽しむという空間作りを提案したいのです。ですからそれは単に家具の提案にとどまらず、クルーザーが庭先に停留できるような海辺の住まいの開発と提案も進めています」(野澤氏)。
すでに野澤氏の周りに集まるライフスタイルの“目利き”集団のコーディネートによってB&B Italiaの家具が生きる家づくりもはじまっているという。家具だけでなく土地や家もコーディネートするという大きな戦略がここにある。
輸入家具が大きなシェアを占める家具業界もローエンドとハイエンドの大きな二極分化が進んでいる。まだ伸びしろが期待できるハイエンドに関してはますます競争が激しくなるようだ。匠大塚やB&B Italiaのケースを見てわかるようにライフスタイル全体への提案を行うことによってビジネスを成立させるという考え方が徹底している。プレミアムマーケットを対象とする新たなビジネススキームとして根付いていくかもしれない。
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