演説力 わかりやすく熱い言葉で政治不信を吹き飛ばせ 岩見隆夫著 ~政治家と聴衆が共振する政治は復活するか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
演説力 わかりやすく熱い言葉で政治不信を吹き飛ばせ 岩見隆夫著 ~政治家と聴衆が共振する政治は復活するか

評者 ノンフィクション作家 塩田 潮

 政権選択といわれる総選挙である。いまは「演説の季節」のはずだが、実際は近年、政治家の演説軽視と有権者の演説離れが顕著だ。「演説の衰退」は何を意味するか、日本の民主主義の現在と将来にとってどんな問題を提起しているのか、「演説の復権」は必要なのか--。

40年以上も政治を観察し、本質を看破する評論と主張で定評のある著者が「演説」という視点から政治の問題点と可能性を考察した。有権者にとっても絶好のタイミングの刊行である。

演説の衰退は、共同体の空洞化、日本語への愛着の衰弱、政治のワイドショー化、政治不信が原因だが(第1章)、戦後の「官僚国家」と代議制民主主義の形骸化による大衆迎合政治、官僚作文の横行に見られる政治の無難主義と裏取引偏重の裏芸政治(第4章)が背景にあると著者は指摘する。同感だ。

集票と演説の方程式が崩れ、「名演説」「雄弁家」も死語化しつつあるが、永井柳太郎、斎藤隆夫から中曽根康弘、海部俊樹まで、戦前・戦後の演説史に残る政治家の言葉と思想、姿勢と生き方を追い、「演説不在」によって生じた政治の閉鎖性を打破するヒントを提示する。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事