川添高志・ケアプロ社長--日本の健康診断費をワンコインにする男
ワンコイン健診を生んだ“危機感”
ケアプロ社長の川添高志は、小学校のときにレスリングで全国制覇。中学・高校もサッカーに打ち込んだスポーツマンだった。それほど医療に興味があったわけではない。川添がケアプロの起業に至ったのは、医療への危機感を抱いたからだ。
9年前。高校3年生だった川添は、老人ホームで入浴介護のボランティアをする機会があった。2人のスタッフで20人ほどの老人を入浴させ、着替えさせる作業。そこで目にしたのは、老人たちがぞんざいに扱われる現実だった。体にせっけんの泡がついているのにお湯で流さない、濡れている体をふきもせず服を着せる……。見たことのない光景に胸が痛んだ。「いったい、なぜこんなことになるのか……」。
さまざまな理由を考えたが、行きついたのは「経営の問題」だった。人手不足に悩む現場。限られた収入と人数で何とかしようと効率性を重視した結果、老人一人ひとりに対する丁寧なケアが行き届かなくなっていた。
「日本の医療・介護がこのままでいいのか」。自分の中に生まれた医療政策や医療経営に対する大きな問題意識。高校卒業後は、東大に行って厚生官僚になるか、実業界に多くの人材を輩出する慶應に行って医療経営者になるための腕を磨くか。
悩んだ末に選んだのが、慶應の湘南藤沢キャンパス(SFC)に新設された看護医療学部。「21世紀のヘルスケアの先導者を育成する」というビジョンと入学1年目から医療経営や医療政策が学べるところが気に入った。
大学3年、4年生のときに海外研修にも行った。場所は米国のメイヨー・クリニック。世界各国のセレブがジェット機を飛ばしてやってくる世界的な大病院だ。新鮮な気持ちで多くのことを吸収しようと意気込む川添。その心に、現地の医学生の言葉が重くのしかかった。