「人をたてる」名人になれば万事うまくいく! キーワードは「自己重要感」だった

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また、ほめ言葉を口にすれば、それだけで相手を大いに立てることになります。相手と接している時に、「素晴らしいな」「すごいな」と思う瞬間があったならば、タイミングよく、その場で素直にほめ言葉を口にしましょう。迅速に伝えれば伝えるほど、ほめ言葉は効果を増すものなのです。

お辞儀は相手へのメッセージ

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普段の行動を通して人を立てる方法のひとつとしては、お辞儀があります。お辞儀は相手に対して感謝や敬意を表すときの動作でもあり、同時に相手の自己重要感を高めるためのメッセージでもあるのです。

幕末から明治にかけて、二度も総理大臣を務め、軍や政界に影響を与えた山形有朋という人物がいます。彼は相手の身分を問わず、顔見知りの納豆売りにさえもお辞儀をしていたといいます。

これは、松下村塾を主宰していた吉田松陰の影響によるものでした。山形が松下村塾で学問を学んでいたとき、松陰は講義の前後に必ず塾生たちに向かって深々とお辞儀をしていたといいます。松陰はお辞儀をすることで「君たち塾生は、私にとって大切な人である」というメッセージを送っていたのでしょう。

お辞儀をされた相手は、なんとなく立てられたような気分がして、うれしくなるものです。山形有朋はお辞儀をすることで、自分と接する人たちの自己重要感を高めていたのです。

人を立てるのが上手な人は、誰に対しても誠実な態度で接するものです。決して人を見下したり、蔑んだりはしません。そして、誰に対しても気を配るという特徴があります。

アメリカの実業家で「自動車王」と呼ばれたヘンリー・フォードは、その典型的な人物だといえるでしょう。フォードは会社が成長し、多くの人員を抱えるようになってからも、従業員ひとりひとりの名前を覚え、その人がどんな状況にあるかを把握していました。そして、従業員と顔を合わせるたびに、こんな言葉をかけたといいます。

「トミー! 君はスキーが得意らしいね。今年のクリスマスもスキーに行くのかい?」

「ボブ! もうすぐ3番目の子どもが生まれるらしいね。上のふたりは女の子だから、今度は男の子が欲しいんじゃないのかい?」

トップの人間からそう言われた従業員は、自分の存在を認められてうれしくなります。結果的にフォードは、大勢の社員から慕われ続けました。

このように、ほんの小さな心がけや言動で相手の自己重要感を高めると、自分の運もみるみる好転していくものです。先輩や後輩、恋人や夫婦、上司や部下などの身近な人間関係で、ぜひ活用してみてください。

植西 聰 著述家

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東京都出身。学習院大学卒業後、資生堂に勤務。独立後、人生論の研究に従事。独自の『成心学』理論を確立し、人々を明るく元気づける著述を開始。1995年、「産業カウンセラー」(労働大臣認定資格)を取得。『「折れない心」をつくるたった1つの習慣』『平常心のコツ』など、著書多数。
 

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