消費増税「再先送り」は問題を何も解決しない 「世代間格差」をまだ放置するつもりなのか

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消費増税を再先送りしても、景気がよくなれば財政赤字はむしろ減るというのも欺瞞である。現に、安倍内閣になってから、当初の予定よりも税収が上振れした分の大半は、補正予算などの歳出増で振る舞ってしまい、その分財政赤字は減らせなかった。景気をよくして税収が増えても、財政収支の改善にしっかり充てなければ、財政赤字は減らないのだ。おまけに、消費増税を再先送りしたからといって景気がよくなる保証もない。

菅義偉官房長官は、2月26日の記者会見で「税率を上げて税収が上がらないようでは、消費税を引き上げることはあり得ない」との旨の発言をしているが、本連載の「増税でも税収増達成、ついに崩れた都市伝説 2015年度予算案の目玉は何か」で詳述したように、税率を上げても税収が減る現象は、わが国では過去にも起きていない。

インフレで世代間格差は縮まらない

むしろ深刻化するのは、社会保障の給付と負担をめぐる世代間格差の拡大である。消費増税によって賄われる社会保障財源は、高齢者も負担するから、その分だけ世代間格差を縮小させる。しかし、それを延期してしまえば、その機会は失われる。

もっと重要なことは、経済成長やデフレ脱却、その後のインフレによって、世代間格差はほとんど縮められないということだ。確かに、インフレによって資産を持つ高齢者に負担を求められても、現行税制は勤労世帯に重く負担を負わせる構造だから、経済成長して低所得の若年者の所得が増えても、結局社会保障の負担を強いられ、世代間格差の縮小にはつながらない。税制や社会保障制度を根本的に改革しなければ、世代間格差は縮小しないのだ。世代間格差が縮小しなければ、若年層の老後不安は払拭できず、消費も伸び悩む。

消費税の10%への引上げが再先送りされれば、一時的な景況以上に重要な問題である、社会保障の給付と負担の世代間格差が放置されることになる。経済成長の促進は重要である。しかし、景気が先で世代間格差は後と言っている限り、将来世代へのツケ回しという「罪」はますます大きくなっていく。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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