消費増税「再先送り」は問題を何も解決しない 「世代間格差」をまだ放置するつもりなのか

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野党が「アベノミクス」を批判すればするほど、安倍首相はその批判に反論して、消費増税を再先送りできない状況であることを認める言質を与える結果になっている。あるいは、逆に言えば、安倍首相の本音は、消費増税を予定通り実施したくないのだと思えば思うほど、実体経済は芳しくなく「アベノミクス」は奏功していないと認めるようなものである。では、安倍内閣は2017年4月の消費増税を「確実に実施」するだろうか。本連載の「軽減税率導入は消費増税再先送りの引き金か 税制を政権維持の玩具にしてはならない」にも記したように、消費増税を再先送りする口実を、景気動向以外のどこかに見つけたがっているようである。

国際金融経済分析会合の狙い

そして、ここに来て安倍首相は、5月の伊勢志摩サミットで世界経済の安定に向けた対応について協議するため、サミットに先立って、世界的に著名な経済学者らと意見を交わす「国際金融経済分析会合」を開くことを決めた。この会合は、消費増税再先送りの布石ではないかとうわさされているが、政府は今のところそれを否定している。

世界的に著名な経済学者と意見を交わしても、消費増税を再先送りする口実が得られるかは微妙だ。本連載の「日米で違いすぎる『反緊縮財政』を巡る議論 大御所が見る米国経済『利上げ後』のゆくえ」にも記したように、反緊縮財政論にも賛否がある。公正に人選すれば、消費増税再先送りにつながる反緊縮財政論に賛否が分かれ、自明に口実が得られるわけではない。しかし、露骨に反緊縮財政論を唱える学者ばかり呼んで意見を聞けば、結論が見え見えで単なる八百長会合に成り下がる。

しかし、安倍首相は、サミット議長国としてアジェンダ・セッター(議題設定権保有者)になれる。そして、サミット首脳宣言を取りまとめる役を担う。そうした中で、参加するG7の諸外国から、日本は消費増税を再先送りせよと言われたのだとかと、日本側が振り付けたりしたら――。

消費増税を再先送りしても、何の問題も解決しない。社会保障給付の財源確保もおろそかになるし、2020年度の基礎的財政収支黒字化という財政健全化目標の達成は絶望的になる。2020年度の財政健全化目標がなくなれば、2010年代後半の財政運営は、完全に無秩序状態となる。医療・介護給付の重点化・効率化も、無駄な歳出の撲滅も、動機付けを失い、行財政改革は停滞する。

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