IT業界の2016年度業績は、ズバリこうなる 「会社四季報」記者が大胆予想、注目企業は?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
EC 晴れ→晴れ

国内EC(電子商取引)市場は拡大が続くが、中長期的な頭打ち懸念も顕在化しつつある。業界全体で動きが目立つのが、国境を越えて商品を売買する越境ECへの取り組みだ。ただ、外国語で顧客のやり取りや国際配送が障壁で、本格化にはまだ時間がかかりそうだ。

ヤフーが楽天を追い上げ

楽天の2016年度(2016年12月期)は営業利益が1250億円と、前号予想より200億円下振れ。楽天市場やトラベルの国内ECは売り上げ規模を伸ばすが、ポイント還元の強化策などで、費用増が見込まれるからだ。楽天はECサイト「楽天市場」の改修も計画しており、利益水準の押し下げ要因となっている。

画像を拡大
週刊東洋経済3月12日号(7日発売)の広告です

楽天に追い上げをかけるのはヤフーだ。これまではポータルサイトでの広告収入が牽引してきたが、ECの強化にも本腰を入れている。2016年3月期は下期だけでECモール「Yahoo!ショッピング」を中心に200億円を追加投資。自社発行のクレジットカードと連携したポイント還元策を強化して、楽天ユーザーの引きはがしにかかっている。2016年3月期はアスクルの連結化で株式再評価益約600億円が営業利益に計上されたのを幸いに、ECとカードで積極投資に出た。期末に向けても先行投資の手は緩めていないため、営業利益は2380億円と前号比ほぼ横ばいでの着地を見込む。

注目企業はクルーズ。アパレルECとスマホゲームの二刀流で、運営するECサイト「ショップリスト」は競合の少ない領域の安価な「ファストファッション」に絞ったことが奏功している。2016年3月期は第3四半期までのEC事業の売上高が112億円と前年比1.5倍で推移している。テレビCMを積極展開し、まずは利益よりも知名度向上と利用者増を優先する。将来的には、当たれば大きいが浮き沈みの激しいゲームを、安定収益の見込めるECで支える事業構造を確立する計画だ。

半導体・半導体製造装置 薄曇り→晴れ

業界の成長を牽引してきたスマホの台数成長が鈍化。スマホに依存してきた多くの半導体メーカーは、業績が頭打ちになっている。中国市場の減速で、好調だった産業機器向けの半導体販売も不調に陥り、拍車をかける。スマホ依存から脱却するため、半導体業界はさまざまな「モノ」に半導体を搭載するIoTや自動車電装化の進展に期待。そこで、大手半導体メーカーは製品の種類を拡充させようと積極的にM&Aを展開している。

ルネサスは縮小傾向、東京エレクトロン堅調

車載用マイコンで世界首位級のルネサスエレクトロニクスは、構造改革で不採算事業からの撤退を随時進めているため、基本的には縮小傾向にある。2016年3月期の後半は、自動車向けの半導体販売は底堅く推移するものの、中国中心に産業機器向けの販売が勢いを欠く。円高基調も逆風。会社は通期の業績予想を前号時点で出していなかった。第3四半期になって会社は業績予想を開示した。最新号では前号と比べ、会社予想と同じく、若干の下振れを予想する。

半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロンは、一度落ち込んだ大手半導体メーカーの設備投資が復調傾向。特に、新型メモリである3次元NANDフラッシュメモリの量産が本格化することや、「iPhone7」に搭載される半導体でさらなる微細加工化の進展が見込まれていることなどが、追い風となっていると考えられる。新春号時点と比べると、上振れとまではいかないが、堅調だ。

注目企業はウエハ洗浄装置で世界ダントツのSCREENホールディングス。スマホや中国減速の影響で、東京エレクトロンやアドバンテストなどの半導体製造装置メーカーは、今期に一度は下方修正をしている。一方、SCREENは、第1、第3四半期で小幅ながら業績予想を2度の上方修正。そのSCREENの業績を底支えしたのが、液晶製造装置事業だ。今第3四半期までの実績は、売上高228億円(前年同期比92.7%増)、営業利益22億円(前年同期は10億円の営業損失)。中国液晶メーカーからの大規模な設備投資が、SCREENの液晶事業を躍進させた。

その背景には、液晶メーカーに対して中国政府による強力な後押しがある。中国は国家戦略「中国製造2025」を掲げ、中国の地方政府は、工場建設の際に一部出資するなど現地製造業に積極的な支援策を展開している。中国政府からの後押しを受け、中国現地の大手液晶メーカー4社は2015~2018年に合計3兆円以上の設備投資を計画しているといわれている。

次ページ東芝やソニーなど電機・電気業界は?
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事