IT業界の2016年度業績は、ズバリこうなる 「会社四季報」記者が大胆予想、注目企業は?
これまで需要を牽引してきたスマホは、台数減速が来期からより鮮明になりそうだ。2015年9月発売の「iPhone6s」シリーズは前年比横ばい程度。2014年度に前年比3倍増の6112万台を売り上げ、「紅いアップル」と呼ばれた小米(シャオミ)も2015年度は15%増の7000万台と伸びが鈍化した。背景にあるのは、最大の需要国である中国市場で普及が一巡したこと。スマホの性能も目新しさが薄れつつあり、買いかえサイクルの長期化も追い打ちをかける。
これを受け、電子部品各社は車載向けに力を入れ始めている。自動車は自動運転をはじめとした電装化が著しく、間違いなく成長する市場ではある。一方、製品サイクルが長く、爆発的な成長は期待しづらい。したがって、来期は多くの電子部品各社にとって成長鈍化の年になる。
村田製作所はスマホ依存度高いが、持ちこたえる
村田製作所はスマホへの依存度が高いため、市場成長鈍化の影響は避けられない。だが、村田製作所が得意としているコンデンサーや高周波フィルターには追い風が吹いている。中国のLTE回線普及に代表される新興国の通信回線高度化によりスマホ1台あたりの部品数が増加著しいからだ。台数鈍化の中でも業績堅調を維持できる数少ない企業となりそうだ。
日本電産は2015年度から「ハプティック(触覚)デバイス」でスマホ市場に本格参入した。アップルがiPhone6sシリーズから採用しているとみられており、他のスマホメーカーへの採用が進むことで成長が期待できる。スマホ部品の中でも成長分野を抑えていることに加え、「スマホの次」と目される自動車向け比率が高い。車の操舵をつかさどるパワーステアリング分野などは油圧からモーターへの置き換えが著しく、こちらも村田製作所と同じくスマホの成長が鈍化しても堅調な業績を維持できる。
京セラは、村田製作所、日本電産と並ぶ京都企業の代表格だが、2014年度はソーラー電池事業と携帯電話事業、2015年度はディスプレー事業でそれぞれ減損を強いられた。ここ数年思うように業績を伸ばせていなかったが、これまでの減損がようやく功を奏し、また細かい改善の積み上げも効いて、収益力を取り戻しつつある。2016年度はスマホの台数の成長鈍化により追い風は弱くなるが、大きな減損がなければ、利益は改善するだろう。
キヤノンは、カメラ市場の縮小が止まらず、事務機器も成熟化が進展。2016年度も主力2事業は厳しい環境が続く。一方、2015年末に半導体製造装置ではナノインプリントと呼ばれる新方式の量産試作機を出荷開始し、ネットワークカメラ分野でも2015年にアクシス社を買収した事で世界シェア1位に躍り出た。2016年度も営業益は3500億円超と高水準が続くが踊り場の感は否めないが、次なる成長に向けた仕込みが着々と進んでいる。
ニコンは、カメラの市場縮小が止まらない中、2016年度は思いがけない特需に沸く。中国で液晶パネルメーカーの大型投資が相次いだことで、ニコンが得意とする中小型液晶露光装置の引き合いが劇的に増えているのだ。ここ数年不調にあえいできたニコンだが、2016年度は久し振りに特需に潤う1年になりそうだ。
スマホの成長鈍化を受けて成長分野の開拓に苦慮する企業が多い中、意外なところで業容を拡大する企業がある。コネクター大手のSMKだ。SMKはコネクターを主力事業としているほか、家電向けリモコンのOEM供給も行っている。価格競争が厳しく、赤字が続いていたリモコン事業だが、今期は売り上げ4割増で黒字転換を見込む。全社営業利益も前年比倍増となる42億円を計画しており、絶好調だ。
背景にあるのは、「Netflix(ネットフリックス)」をはじめとした映像ストリーミングサービスの世界的な普及だ。映像ストリーミングサービスを契約すると、動画情報の受信のためのセットトップボックスが送られてくる。それに使うリモコンの生産を一手に引き受けたことで急拡大を遂げているのだ。
セットトップボックス向けリモコンは家電より高度な通信が要求され、タッチパネルが搭載されている場合も多い。そのため、付加価値が高いものの製造難易度が高い。だが、通信とタッチパネルはSMKがもともと保有していた事業分野。市場のニーズと自社の技術がうまく噛み合ったことが製造受託専業のメーカーに対する優位性につながった。映像ストリーミングサービスは来期以降もさらなる普及が期待できる分野。SMKの好調はこれからしばらく続くだろう。
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