IT業界の2016年度業績は、ズバリこうなる 「会社四季報」記者が大胆予想、注目企業は?
原油安、円高転換、マイナス金利、しぼむ外需――。マイナス材料が噴出し、企業業績の先行きに不安が高まる中、週刊東洋経済は3月12日号(7日発売)の特集『企業業績緊急点検 沈む株・浮かぶ株』で、3月中旬に発売を予定している『会社四季報』最新号(今回は2016年春号、前号は2016年新春号)の独自取材を基に、2016年度の企業業績を占った。
そのうち、基幹産業の一つであるIT業界の先行きはどうなりそうか。各担当記者による天気予想をお届けしよう。
各社とも大幅な増益となりそうな「快晴」が続くのは通信業界だ。総務省の販売競争自粛指示により、不採算なMNP(モバイル・ナンバー・ポータビリティ=電話番号を変えずに携帯会社を変えること)の新規契約が減ることで、業績の改善が見込める。次に天気が良さそうなのはEC(エレクトリック・コマース)。店舗販売が主流だった衣料品や食品などのEC化が進み、2015年度も2016年度も「晴れ」となりそうだ。半導体はIoT(モノのインターネット)の普及の動きから需要が旺盛で「晴れ」。半導体製造装置は設備投資の抑制が一巡し、2016年度は「晴れ」を予想する。
では業界別に主要企業の動向も踏まえつつ、詳しく見ていこう。
値引き販売是正で通信3社は業績改善へ
総務省の有識者会議の議論を受けて、高市早苗総務大臣が携帯3社に「実質ゼロ円以下」に象徴される、過度の値引き販売を是正することを要請した。3社は2月から「実質ゼロ円」の表示をやめたり、キャッシュバックをやめたりしている。
この結果、1月末にかけて駆け込み需要があった一方、2月は販売台数が前年同月比で約2割減った。3月は、2年前の3月にMNPで携帯会社を乗り換えたユーザーが相当数いることから、春商戦が去年よりも盛り上げるとみられている。しかし過度な値引き販売に対して、総務省が告発窓口を設けたり、覆面調査を実施したりしていることから、例年のような値引き競争は起こらなさそうだ。
来期の販売台数は、「5~10%減る」と携帯各社は販売店に内示している。しかし、減る分の多くは、過度の値引き販売の結果、もともと利益に直結しないばかりか、売れた以上にコストがかさむMNPだった。この分が減ることは、携帯各社にとっては増益要因になる。3社とも1兆円前後の営業利益を叩きだしそうだ。
以上の背景から、携帯3社の国内通信部門は大幅な増益となる。会社四季報の前号比でNTTドコモの営業利益は1300億円ほど上ブレそうだ。ドコモは、契約数が3社の中で最も順調に伸びているほか、設備費などのコスト削減の進捗が想定を上回っている。KDDIの上ブレ額は100億円程度。もともとの会社計画が高かったので、上ブレ額は小幅だ。契約数の伸びが3社の中で最も低いソフトバンクグループは前号比変わらずとなる。
注目企業は光通信。月額課金による安定収益基盤をBtoB向けに増やし、営業利益がどんどん大きくなってきている。2012年3月期は183億円に過ぎなかった営業利益が、今年度(2016年3月期)は360億円、来年度(2017年3月期)は400億円になりそうだ。月額課金による安定収益基盤は、かつては事務機や携帯くらいしかなかったが、水サーバー、光回線、自社SIM、ルーターと種類を増やしてきている。それらを持ち前の営業力で零細中小企業に拡販している。
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