GDP統計を使った怪しい議論に要注意

無形資産を反映せず指標としては不完全

これに対して新たに、約15兆円の研究開発費がGDPに加算されることになった。ところがM&Aの際の「のれん代」のような無形資産は、今後もGDPにはカウントされない。ブランド資産もデータベースも、クラウドもIOTも、「それだけでは付加価値を生まないからGDPには含みませーん」ということになってしまう。

でも、今の日本企業が設備投資をすると言ったら、今さら工場建設や新本社ビルではないだろう。むしろ、ブランドや技術や特許といった無形資産への投資が増えているはずではないか。現在のGDP統計は、そういった動きを把握できていない恐れがある。

GDP作成マニュアルを国連とOECDが議論

アダム・スミスが『国富論』を書いた昔には、モノづくりだけが付加価値であって、サービスは国民所得だとは見なされていなかった。当時、英国貴族の家庭教師を務めていたアダム・スミスは、「使用人はその主人にとってのコストに過ぎず、何の価値も生まない」と評価していた。かかる「サービス業軽視」の姿勢は、カール・マルクスも賛同するところとなり、旧ソ連などの社会主義国経済にも引き継がれた。

しかし今どき、「サービス業に付加価値はない」と断じる人はいないだろう。つまりGDPのような統計は、経済の変化に合わせてどんどん見直さねばならないのである。GDPの作成マニュアルについては、国連とOECDが常時議論を重ねている。でも、まだまだ改善の余地は少なくないのではないか。くれぐれも不完全な指標を使って、怪しげな議論を展開するのは勘弁してほしいものである。

そういえば昨年12月、中国社会科学院日本研究所の国際会議に参加した際に、先方側が「中国のGDPは今では日本の2倍以上ある」「中国はこんなに経済大国になった」などとしつこく繰り返すものだから、ついカチンと来てこんな余計なことを言ってしまった。

「あなた方、GDPという統計はいつ、どこで誰が発明したか、ご存知ですか?」

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