商人道ノスヽメ 松尾匡著
武士道ほどに商人道は知られていない。しかし、むしろ現代日本人にとって、適した倫理原理、道徳観であると著者はいう。詳述されるのが、石田梅岩と近江商人の商人道。「江戸商人道」を貫く「開かれた個人主義」にスポットライトが当てられる。
たとえば、近江商人道の象徴的スローガンは「三方よし」、つまり「売り手よし、買い手よし、世間よし」だが、もともと「自利利他円満」の菩薩道の教義の実践という。ただ、利潤の正当化は梅岩の商取引観を借用し、武士が俸禄を受けると同様なことであり、商人の売買は世の中の助けになると不善批判をかわす。
さらに商人道に共通するのは、正直さ公正さの重視であり、勤勉と忍耐、しまつ、社会貢献、他国者意識、血縁びいきからの脱却、また才覚と創意工夫が尊ばれ、新事業への金融支援も当たり前に行われたという。
確かに「身内集団原理」の武士道より、商人道優位の時代を迎えたようだ。
藤原書店 2520円
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