数字で突く労働問題の核心 雇用の常識「本当に見えるウソ」 海老原嗣生著 ~事実に基づいて雇用問題を考える

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
数字で突く労働問題の核心 雇用の常識「本当に見えるウソ」 海老原嗣生著 ~事実に基づいて雇用問題を考える

評者 原田 泰 大和総研 常務理事チーフエコノミスト

 事実と異なっているにもかかわらず、なぜか繰り返し主張される言説がある。本書は、雇用問題についての誤った言説を集め、検証し、そのうえで望ましい政策を提言している。

検証した事実は、「終身雇用は崩壊していない」「派遣社員の増加は、正社員に置き換わったからではなく請負からの付け替えにすぎない」「正社員は減っていない」「熟年を悪者にする若者かわいそう論は誤り」「昔は良かった論は誤り」「ワーキングプアの実態は働く主婦」などである。

多くは説得的だが、事実の解釈において、現状を弁護しようというバイアスも感じた。たとえば、労働力率が上昇したことをもって社会全体が雇用機会拡大に舵を切り、今まで働いていなかった層を取り込むために雇用主にとって妥協しやすい非正規社員を増やしてきたとある。しかし、労働力率は、その分子に失業者も含むため上昇するが、実際に働いている人だけを分子にした就業率はほとんど上昇していない。労働力率の上昇の多くは、失業者の増加によるものということになる。これでは日本が意外とうまくいっているということにはならない。

ワーキングプア1000万人という説があるが、その多くは働く主婦であるという検証には賛同する。しかし、4人家族世帯主のワーキングプアが少ないから問題ないとは言えない。少ないのは、ワーキングプアは結婚することが困難で、日本で標準とされている4人家族世帯主にはなれないからだ。

事実を無視する言説への批判は納得できるが、すべての批判と政策提言が説得的というわけでもない。しかし、悪いことはすべて小泉改革のせいにする論調を戒め、事実に基づき雇用問題を考える姿勢には共感でき、検証の多くは痛快ですらある。

えびはら・つぐお
人事雑誌『HRmics』編集長、リクルートエージェントソーシャルエグゼクティブ、リクルートワークス研究所特別編集委員。1964年生まれ。リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。『Works』編集長を経て、2008年より現職。

プレジデント社 1600円 207ページ

Amazonで見る
楽天で見る

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事