乾坤一擲! GSユアサが電池増産へ大型投資
社運を懸けた大勝負は吉と出るのか。ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)向けのリチウムイオン電池を製造するGSユアサが7月下旬、大規模な公募増資を実施する。
最大4600万株を発行し、328億円の調達を見込む。「過去に例のない規模」(GSユアサ)という。増資に伴い普通株1株価値は約13%希薄化するが、GSユアサには、それでも資金調達が必要な理由があった。電池増産に向けた設備増強である。
同社は5月に発表した2010~12年度の中期経営計画で、年間平均250億円の設備投資をうたった。これは昨年までの投資額の2倍以上。その約7割をリチウムイオン電池の増産に振り向ける。
GSユアサは、もともと国内鉛蓄電池の大手だったYUASAと日本電池とが、04年に経営統合して誕生した会社。現在も鉛蓄電池を使った自動車用バッテリーで国内首位、世界3位の実力がある。
他方で、より高性能の蓄電性能を持つリチウムイオン電池の開発にも踏み込んだが、事業の柱には育てられなかった。1990年代後半には、子会社が携帯電話向けなどのリチウムイオン電池製造に注力したが、後発参入した韓国、中国系との価格競争に敗れ、02年に株式の過半を三洋電機に売却。実質撤退を余儀なくされた。その後は通信衛星や海底調査船などのニッチ用途にとどまっていた。
収益化には時間も
だが、90年代後半から地道に開発を続けてきた自動車用のリチウムイオン電池が風向きを変える。トヨタ自動車、ホンダはじめ世界中のメーカーがHEV、EVへの傾斜を強める中、GSユアサに再挑戦の機運が高まった。