[新訳]大転換 市場社会の形成と崩壊 カール・ポラニー著/野口建彦、栖原学訳 ~市場経済が持つ本源的な問題点を鋭く分析
カール・ポラニーの古典的大著、『大転換』に待望の新訳が出た。「自己調整的な市場経済というものは幻想であり、このような制度は人間的実在と自然的実在を壊滅させることなしには一瞬たりとも存在し得ない」として、市場経済が持つ本源的な問題点を鋭く分析した本書は、グローバル資本主義が行き詰まりを見せている現在、まさに必読の書と言える。
旧版に比べると、訳文はこなれ、また、時代背景がよくわかるようにと訳者による訳注が充実した。各章ごとに訳者の簡潔な要約がつけられたのも貴重な読者サービスである。さらに、ノーベル経済学賞を受賞したJ・スティグリッツの序文と、著名なポラニー研究者であるF・ブロックの長文の紹介が追加されたことも時に難解な本書を理解する一助となっている。
原書は、70年近くも前に書かれたが、今日でも多くの読者に読まれていることが示すように、中身は色あせていない。それどころか、グローバル資本主義体制が抱える問題点を理解するのに、本書ほど本格的な書物は他にないと言っても決して言いすぎではないと思う。
本書を要約するのはやさしくないが、結局、ポラニーが主張したいのは、近代経済学が主張するような「社会」と「市場経済」の分離というものはあり得ないということである。自己調節的な市場経済は必ず「社会」に貧困、社会の劣化、環境破壊などの壊滅的な打撃を与えずにはおかない。根本的に言えば、そもそも、再生産が不可能な「労働」や「自然」を市場に従属させる(商品化する)資本主義体制そのものに無理があるというのが著者の主張の原点にある。