日本はスペイン無敵艦隊の「二の舞」になる 元国税調査官が分析する「消費増税」のリスク
しかし、当時のスペインの消費税「アルカバラ」は、「一品ごと」ではなく、「取引ごと」に課税されたのです。つまり、製造業者が卸売業者に販売する時にも、卸売業者が小売業者に販売する時にも、小売業者が消費者に販売する時にも消費税がかけられる。ひとつの商品に、取引業者の手を経るごとに消費税が累積されるのです。もちろん、累積された消費税は、商品の価格に上乗せされます。
このシステムにおいては、国王側としては「税収が増える」ことにはなります。ただ、ひとつの商品にこれだけ高い消費税が課せられるということは、当然、物価は上がるし、そうなるとゆくゆくは景気の低迷につながります。実際、大航海時代のスペインでは物価が大幅に上昇しているのです。
その結果、スペインの国際収支は悪化しました。せっかくポトシ銀山で採って運んできた大量の銀も、スペイン・カディス港に運ばれても荷揚げされることなく、ヨーロッパ各地に送られてしまいました。国際収支の決済と、国王の借金の返済のために、スペインでは荷揚げされることなく、別の土地に流れていったのです。
日本が、無敵艦隊のように沈む日が来る?
スペインの国際収支悪化、財政悪化は、スペインの海運業にも深刻な影響をもたらしました。16世紀後半までスペインは、イギリスやフランスの2倍の商船隊を持っていました。しかし、17世紀になると、船舶数で75%以上の激減となり、スペインの造船業は、ほぼ死んでしまいました。これが、「無敵艦隊」の衰退につながります。
なぜなら、当時は、日頃は商船として使用している船舶を、戦時にだけ海軍船(軍艦)として利用することが多かったからです。商船が「無敵艦隊」の礎をつくっていたとも言え、海運業の衰退はすなわち、海軍力の衰退を意味していたわけです。
逆にいえば、スペインの無敵艦隊が急速にその力を失っていったのは、スペインの海運業が衰えたためであり、つまりはスペインの財政悪化、国際収支の悪化が招いたことなのです。これが、「消費税が無敵艦隊を沈めた」ともいえる所以です。
近年の日本においても、消費税を導入した直後に、「バブル崩壊」と「失われた20年」が始まりました。アベノミクスで若干、景気は上向いたとされていますが、国民はその実感をほとんど持っていません。そして、また来年には消費税の増税が予定されています。
日本が、無敵艦隊のようにならなければいいのですが……。
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