ランボルギーニはなぜここまで急成長したか 「過去15年で販売12倍」の軌跡を追う

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そのDNAは現在に至るまでうまく活用され、フェラーリ「F40」が発表されれば、その最高速度を1km/n上回る「ディアブロ」をランボルギーニは投入。前述のガヤルドもそのコンセプトはディアブロと同時代に企画されたフェラーリ348TBに対抗する“小型”ランボルギーニのプロジェクトへとさかのぼるという感じだ。

それだけではない。カウンタック時代に育まれ今もブランドの重要なDNAとして尊重されているコンセプトがあると前述のスタンツァーニは語る。

現在も尊重されているコンセプトとは

「伝統のない新しいメーカーであることを逆手にとって、“新しい”、“革新的”ということを強みにしたんだ。それをさらに煮詰めると“アヴァンギャルド”“未来的”というようなキーワードが生まれた。“ほかの人達が明日やろう、ということを今すぐやるべし”というのがランボルギーニブランドに対する私の結論だったんだ」

『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ~伝説を生み出すブランディング』(越湖信一著、KADOKAWA)。上の画像をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

ランボルギーニはカウンタックと同じシャーシ・レイアウトを現在に至るまで使い続け、カウンタックのデザイナーであるマルチェロ・ガンディーニが描いたスタイリング・イメージを今も尊重している。その結果として、ランボルギーニの各モデルは誰が見てもすぐにランボルギーニであることがわかる、というアイデンティティを備えている。

アウディ傘下となり絶好調なランボルギーニは、工場施設も拡大して、先ごろも大規模な人員拡大を行った。これは発売が予告されているSUV「ウルス」の開発と生産を見越したものであろう。しかし、そんな絶好調なブランドでありながらも、ディーゼル排ガス不正などの問題で揺れているVWグループがランボルギーニの売却も視野に入れているとの噂も聞かれる。

2015年のVWグループの年間販売台数993万台の中に、ランボルギーニの3245台も含まれている。全体の中における数値は微々たるものだが、生み出す利益とブランドとしてのパワーは決して小さくない。VWグループによって莫大な投資が行われ、ブランドパワーも大いに高まっているランボルギーニであるから、もしそれが事実としても、全世界からこのブランドは引く手あまたであろう。

越湖 信一 PRコンサルタント、EKKO PROJECT代表

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えっこ しんいち / Shinichi Ekko

イタリアのモデナ、トリノにおいて幅広い人脈を持つカー・ヒストリアン。前職であるレコード会社ディレクター時代には、世界各国のエンターテインメントビジネスにかかわりながら、ジャーナリスト、マセラティ・クラブ・オブ・ジャパン代表として自動車業界にかかわる。現在はビジネスコンサルタントおよびジャーナリスト活動の母体としてEKKO PROJECTを主宰。クラシックカー鑑定のオーソリティであるイタリアヒストリカセクレタ社の日本窓口も務める。著書に『Maserati Complete Guide』『Giorgetto Giugiaro 世紀のカーデザイナー』『フェラーリ・ランボルギーニ・マセラティ 伝説を生み出すブランディング』などがある。

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