日本の誇りを守るため「伝統文化」も変化せよ なぜ、ここまで「ボッタクリ」がまかり通るか

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さらに言えば、このような伝統技術が知らぬ間に「国産」から「中国産」に切り替わると、非常にまずい事態が進行します。一言で言えば、計らずして日本が世界へ向けた詐欺を行ってしまうのです。

たとえば、外国人観光客が日本に遊びに来て、お土産屋で「京漆器」を購入したとしましょう。高級漆器なので値段はそれなりにしますが、日本のすばらしい伝統技術ということで、この外国人は大満足で帰国。家族や友人に「メイド・イン・ジャパンの伝統的な器を買ってきた」と手渡しましたが、ほどなくそれが「中国産漆」が使われたものだと判明したらどうでしょう。

いや、漆が中国産とはいえ、日本の職人が塗っているのだから「国産」だ、と主張する方もいるかもしれませんが、それはあくまで供給する側の視点です。これを購入した「客」の視点から考えるとどうでしょう。

想像してみてください。みなさんがイタリアで高価な「ヴェネチアングラス」を購入して来たとしましょう。後にそのガラスが実は中国産だったと聞いて、どう感じるでしょう。「ダマされた!」と思わないでしょうか。

金箔業界も怪しい

この漆塗り業界と同じ轍を踏みそうな業界があります。それは「金箔」です。

金箔といえば、やはり石川県の金沢を思い浮かべる方が多いと思います。国内の金箔の99%を生産しているというのは有名な話です。私は小西美術工藝社に入るまで、金沢の金箔はすべて日本産だと妄信していました。マスコミの影響なのか産地の営業の成果なのかはわかりませんが、誤解をしていたといいますか、させられていたのです。

最初に金箔業界に不信感を抱いたのは、金の価格が上がっているときでした。業者から「金の値段が1割上がったから、1枚あたりの単価が1割上がります」と言われました。これは元金融アナリストとして、絶対に認められない話です。1枚あたりの単価のなかには、職人の賃金、固定費なども含まれているはず。金だけで構成されていないのは明らかです。

金の値段が1割上がったからといって、1枚あたりの単価の値上がりはせいぜい2%程度でしょうと言っても、その業者の営業マンは頑張って反論してきました。ゴールドマン・サックスという世界トップクラスの投資銀行の元役員にそんな話が通じるはずもないのですが、それでも1割の値上がりを何とか通そうとしました。金箔業界はこうやって人をだましているんだということがよくわかりましたし、業界のなかで、それを見抜けない人材がいるという問題も痛感しました。

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