カリフォルニア超高速鉄道、実現へ向け一歩前進--資金集め、環境問題…全通までには曲折も

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 「サンタモニカのヴェニスビーチで泳いだ後、高速列車の中で本を読んで、サンフランシスコで食事するって、すごい話だ」と、大学生のフランキー。

建築管理会社に勤務するロス・ガスチェットは「高速鉄道が早くできればよいのだが。今、カルトレインという列車で職場のあるサンフランシスコと自宅のあるサンノゼの間を、月約190ドルの定期を使って通勤している。カリフォルニア州内という短距離間なら、セキュリティ・チェックなどで時間を取られる飛行機より、高速鉄道のほうが便利で論理的」。

タルサ大学法学部助教授のタマラは「鉄道は都市の中心から中心へと移動する。騒音公害でへんぴなところにしか存在できない空港とは違った利点だわ。アメリカは土地が広大だからこそ、もっと列車が必要」と建設推進を支持する。

一方、「サンノゼ市ではカリフォルニア高速鉄道を通すことに決まったけれど、大都市を除くとセントラル・バレーは人口が少ないから、他の公共交通機関のように運営が赤字になって、税金で補填されることになるのではないだろうか。カリフォルニア州財政は破綻しているのに大丈夫なんだろうか」と、懸念するのは、ロサンゼルスのビジネス・コンサルタントのトーマス。

シリコンバレー・リーダーシップ・グループの運輸部門ディレクター、ピーター・スキナーは、「運賃の設定などで、政府の補助がなくても採算が合うよう計画されていると聞く。高速鉄道が実現すれば土地代の安いところに住み、大都会で働くことが可能で、住宅問題は解決する」と語る。シリコンバレー・リーダーシップ・グループは、シリコンバレーの有力企業が集まって地域のビジネス環境の整備を目指す団体。高速鉄道の資金調達面で重要な役割を果たす。

カリフォルニア州での高速鉄道建設計画は80年代にもあり、当時の日本の国鉄関係者が助言するなど事業に肩入れした。しかし、日米で資金集めが難航したうえに、石油会社や自動車会社の圧力もあって実現しなかった。


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