「反中同盟」の呼びかけに加わる国と逃げる国 南シナ海を巡る攻防が緊迫度を増している

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ホワイトハウスの発表は、抽象的な内容にとどまっている。「米国とASEAN諸国とのパートナーシップを一層深める」「オバマ政権としてアジア太平洋へのリバランシングをさらに進める」「今回の会議は2015年11月のクアラルンプールでの首脳会議で始められた、政治、安全保障、経済面での米ASEAN戦略的パートナーシップに基づく協力を強化するためのフォーラムとなる」といったものだ。

もちろん、具体的な狙いがある。そのひとつが、環太平洋経済連携協定(TPP)の推進だ。

ASEAN諸国にTPPへの参加を勧誘

ASEAN10のうちシンガポールとブルネイはTPP交渉の最初から参加しており、マレーシアとベトナムは途中から加わった。残りの6カ国も、フィリピン、ラオス、インドネシア、タイはすでに参加あるいは関心を表明している。カンボジアも最近関心を表明したと言われている。

オバマ大統領にとって、特別サミットはすべてのASEAN諸国のTPPへの参加を実現する重要な機会であった。特別サミット終了後の共同声明でTPPへの具体的な言及が行われなかったのは態度未決定の国の立場に配慮したのであろうが、オバマ大統領は記者会見の中で、「ASEANの全ての国が最終的に参加できるよう、TPPの理解を助ける支援を始めた」と述べている。

一方、安全保障問題、とくに南シナ海をめぐる安全保障については、米国とASEAN諸国は共同声明でかなり率直に考えを表明した。

第1に、紛争の平和的解決だ。その関連で、国連海洋法条約など国際法に従うこと、外交的な解決が必要であること、武力に訴えないことなどを強調した(共同声明第7項)。

第2に、海洋の安全保障と安全である。この関連では、航行、飛行の自由、その他海洋の合法的利用の確保を強調した(同第8項)。

第3に、紛争の平和的解決についても海洋の安全保障についても、米国とASEAN諸国は「ともに順守・尊重する覚悟であること(shared commitment)」と明言して米国とASEAN諸国の考えが一致していることを強調した。

安全保障について米国とASEAN諸国はTPP以上に立場が違うところがあるので、このような一致した見解の表明の持つ意義は大きい。

とくに中国との関係が問題だ。共同声明は中国と名指しこそしていないが、中国が南シナ海で東南アジア諸国との対立をも省みないで行っている拡張的行動を指していることは明らかだ。

オバマ大統領は記者会見で、この共同声明よりさらに一歩踏み込んで、「我々は南シナ海の緊張緩和のため新たな埋め立てや建造、紛争地域での軍事活動停止を含む実効的な解決手段についても話し合った」と述べている。

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