前田新造・資生堂社長--おもてなしの心を伝承しアジアで圧倒的な地位に
「売れない」のは化粧品も例外ではない。資生堂の2009年3月期は大型ブランドの複数投入にもかかわらず、売上高が前期比5%減、営業利益も同21%減に沈んだ。国内の稼ぎ頭である中価格帯(5000円以下)化粧品の苦戦が最大の要因といえる。
それでも資生堂の攻めの姿勢は不変だ。安易な軌道修正よりも、国内は大型ブランドに経営資源を集中投資し育成する計画にまっしぐら。海外でも今年1月に基幹ブランドを刷新したほか、9月には高級スキンケア製品の投入ももくろむ。消費者の低価格志向が世界的に強まる中、同社の戦略は吉と出るのか--。前田新造社長に勝算を聞いた。
--化粧品は景気にあまり左右されないと言われてきましたが、足元の環境は厳しいようですね。
今回はダイレクトに景気の影響を受けた。最も経営に大きく影響しているのは、消費者に低価格化の意識が非常に高まったという点だ。資生堂は中価格帯が商品ボリュームとして大きいが、その需要層が低価格品やディスカウント商品にシフトする傾向が見られている。
一方、高級化粧品市場は去年の上期までは前年比105%程度伸びていて、昨年の秋口以降も同101%を維持してきた。だが、それでも09年3月期は中価格帯化粧品の減少分を高価格帯で賄い切れなかった。
--低価格志向が進む中で、中価格帯品中心に大型ブランドを育てる資生堂の戦略は、今の時代にマッチしていないのでは。
不況になって消費者が低価格に移行する現象があるのは確か。ならば低価格化粧品をつくって対応していけばいい、という議論もあるかもしれないが、この状況がいつまで続くかは不透明だ。その折々で小手先の対応をするよりは、もっとグローバルレベルで対応を考えていくべき。たとえばアジアでは「マステージ」と呼ばれるプレステージよりは値頃感があるが、マス価格ではなくて、それなりの付加価値があるような商品やブランド戦略を考えていく。
一方、日本では過去にブランドが増えすぎて苦しんだこともあるので、そこは軸をぶらさずに、今あるブランドをしっかりと育てていくという戦略に変わりはない。