中国国防費、景気減速でも2ケタ増を継続 抜本改革に対する軍の不満沈静化図る狙いも

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昨年の中国の防衛予算は8869億元 (1364億ドル) と、米国の4分の1程度だった。この20年間、ほぼ切れ目なく毎年2ケタずつ増額されてきた。今年も増額が続くとみられる背景には、中国が造成工事を行って物議を醸した南沙諸島の近くで米国が「航行の自由」作戦を開始した点がある。

外交問題について政府に助言してきた北京大学の買慶国教授(国際関係学)は、「軍事演習、改革実行、軍の準備態勢促進には、どれも費用がかかる」とした上で、「特に海軍は過去のどの時点よりも重要であることが明白だ。南シナ海の情勢が防衛費に重大な影響を及ぼすのは間違いないだろう」と述べている。

「景気減速でも増やし続けなれば」

人民日報の国際版である環球時報は社説の中で、先月の米国の作戦行動は「景気が減速傾向にあっても、国防費の高い伸びを保たねばならないことを思い出させるものだ」と指摘。「中国は、核による反撃力を含めた戦略的な攻撃力の構築を急がなくてはならない」と主張した。

2月の台湾総統選挙で、独立推進派である民進党の蔡英文主席が勝利したことも、中国の強硬派を勢いづかせている。中国の著名な軍事関係者である羅援・元少将は選挙後に環球時報で、「台湾の独立派が我々を追い詰めるようなことがあれば、力づくで統一を推し進めるしかない」と述べた。

(記者:ベン・ブランチャード、マガー・ラジャゴパラン、JR・ウー、

編集:アレックス・リチャードソン)

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