代理店は「ミレニアル引き止め」に悩んでいる マニキュアしながら人事評価も!?

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シカゴに本社を置くエージェンシー、アップショット(Upshot)社では、2015年2月に組織構造を徹底的に見直した。デジタル時代の到来により、クリエイティブ部門や会計部門、戦略部門など、従来から存在する部署がコミュニケーションや生産性を阻害していることに気づいたからだ。

そこでアップショット社は、異なる部署のスペシャリストをかき集め、ハイブリッドな編成チームを組織した。また、ミレニアル世代と1961年から81年にかけて生まれたジェネレーションXの従業員を集め、世代間の違いを語り合い、理解しあえるように集会も開いた。

アップショット社の会計担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるエレン・スラウソン氏は「いままでと違ったマインドセットと実践手段は、ミレニアル世代のために用意されたものだ」とコメント。「我々はどのように働いて欲しいかをミレニアル世代に伝えることはなく、彼らに自由を与えて、彼らがしたいように働かせることにしている」。

友達のような距離で話し合う

また、エージェンシー、ワンダーマン(Wunderman)社のように人事慣習を再考する企業もある。同社は「YouTime」というシステムを導入し、マネジャーと従業員がマニキュアをしながら、またはダンスのクラスを受けながら、社の目標と達成状況について話し合う場を作った。こうした取り組みは、より明確化された人事相談や目標の振り返りをする機会を与えることになった。

「古い社内体制は、昇給や昇進を協議しようとする際に、関係者の大半を嫌な気分にさせていた」と、ワンダーマン社の北米担当CEOとなるセス・ソロモンズ氏はいう。「これらの古い習慣を我々は、捨て去りつつある。『YouTime』は、自らの主張をしていくためのオープンスペースとなっている」。

一方、MXM社は、社員ひとりひとりがそれぞれをポイント制で評価し、そのポイントを褒賞金と引き換えることができる制度を導入している。現在、社内で120万ポイントが付与され、9万ポイント分が褒賞に交換された。グレイ(Grey)、オグルビー(Ogilvy)、ワイアンドアール(Y&R)などのエージェンシー各社も、類似のプログラムを導入している。MXMは、この評価プログラムによって、従業員の定着率が4%ポイント高まり、85%になったと話している。

さまざまな部署で働くことが好きなミレニアル世代を見て、彼らが社内異動をし易いよう配慮したエージェンシーもある。

ボストンのマウリン・ロウ(Mullen Lowe)社では、プランナーがクリエイティブ部門に異動できたり、メディア部門がPR部門またはイベント計画部門へと異動することを可能にした慣習を作った。これによって、会計管理をするクリエイティブディレクターすらいるという。

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