マイナス金利で証券投資が止まってしまう! 証券会社から黒田バズーカ礼讃の声が消えた

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長期金利までマイナスに沈んだ(2月9日、撮影:尾形文繁)

日本銀行によるマイナス金利政策の導入決定を受けて、証券業界に苦悩の色が増している。短期の貯蓄商品、MMF(マネーマーケット・ファンド)が逆ザヤとなり、各社が取り扱い停止に追い込まれ、一部は償還に踏み切ることとなったが、これは厳しい事態の氷山の一角にすぎない。ビジネスモデルの根幹が揺らぎかねないのである。

MMFに類似する安定的な投信商品であるMRF(マネーリザーブ・ファンド)もMMFと同様に、逆ザヤとなる運用構造を抱え込んでいる。だが、証券各社はいまのところ、MRFの取り扱い停止には二の足を踏んでいる。「顧客資産を預かるというビジネスの基本構造に関わる」(大手証券幹部)からだ。

個人投資家の資金の受け皿が割れる?

証券各社は個人投資家から投資に振り向ける資金を総合口座で受け入れて、そこから株式、投信などを購入している。その総合口座はMRFで運用しており、株式、投信などが売却された場合には、売却代金が自動的にMRFの購入に回るスウィープシステムが採用されている。いわば、MRFは株式などの購入・売却代金の受け皿商品であり、顧客預かり資産の保管商品になっているわけだ。

したがって、逆ザヤからMRFの取り扱いを停止することとなれば、証券各社は個人投資家の預かり資産の受け皿を喪失することになりかねず、顧客資金を自社に引き留めることすらむずかしくなる。そのために、運用が逆ザヤに陥って採算が取れなくなっても、MRFを販売し続けるという選択をせざるを得ない。

もし、MRFの取り扱いを停止するなら、次善の策として想定されるのは顧客預り金として、信託銀行を使って自社資金と厳格に分ける分別金管理だ。すでにMRFでは受け入れていない法人の投資資金は、この分別金管理の方式がとられており、証券会社のバランスシート上では顧客資金分別金信託として計上され、信託銀行に信託されている。

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