野村克也氏「今の40代監督はだから危ない」 外野手出身、二軍監督未経験では心許ない

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昔の監督と大きく違うのは、在任期間の短さにあると、野村氏は指摘する。

今の監督は処世術に長けているものが就く

「日本3大名監督といわれた水原茂さんが21年、三原脩さんが26年、南海時代の監督だった鶴岡一人さんが23年と、長期にわたって監督を務められましたが、今の監督は2~3年の契約期間で、成績が悪ければ2年と持たずに監督を辞めさせられる。これでは監督は育ちません。

おまけに低迷しているチームの次期監督の座を狙っている野球評論家たちは、球団の上層部を持ち上げて、処世術だけで監督になろうとしている。こんなことでは悪循環が繰り返されるだけで、チームにとっても百害あって一利なしですよ。ファンの方も、『どうしてこんな人が監督になれたんだろう?』と疑問に思う人が監督になっているようなこともあるでしょうが、それは処世術を発揮して監督になれただけで、監督として本来、兼ね備えていなければならない能力を評価されたわけではないのです」

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監督の資質についての疑問は、侍ジャパンの小久保裕紀監督にも向けられる。

「彼には監督としての資質が著しく欠けていることは、昨年開催された『プレミア12』での準決勝の韓国戦で証明されたでしょう。『監督経験のない小久保がどうして侍ジャパンの監督に?』と疑問に思われたプロ野球ファンは多いでしょうが、彼も処世術で監督になれたに過ぎない。人前では格好つけたがりで、他人から嫌われたくない一面があるというから、本来であれば監督には向かないのでしょう。

それに彼に不利なのは、シーズンに入ってしまえば監督として経験を積む場がまったくないことです。選手であれば、クライマックスシリーズや日本シリーズを戦うことで、短期決戦の勝ち抜き方を学ぶことができる。だが、監督は現場に身を投じていないと、その経験がまったくできないのです。どんなに解説者席で野球を見ていても、ユニフォームを着た時の緊張感や判断力はまるで違う。来年開催されるWBCの監督は小久保で行くようですが、ただただ不安でしかないですね」

プロの監督として弱いチームを立て直してきた野村氏。近著では「監督に求められる資質」として、「言葉の引き出しを持っていること」「人の性格を見抜き、辛抱すること」などの言葉が散りばめられている。それらのメッセージは、野球の世界だけでなく、一般社会でも通用しそうだ。

「私はこれまでの自分の経験から得たことしか書いていません。野球しか知らないし、私から野球を引いたら残るものはゼロ。監督という職務が、野球以外にも当てはまることがあるのならば、『一芸は道に通ずる』ということでしょう。どの世界でも極めていけば、共通するものがある。

それに『組織はリーダーの力量以上に伸びない』からこそ、監督は己に対して厳しく、常に知識や情報の収集に努め、成長していかなくてはならない。孤独と向き合い、不安といら立ちに抱きすくめられる宿命から逃れられないのが監督であるからこそ、飽くなき向上心を持ち続けることが大切なのです」

(=敬称略=)

小山 宣宏 スポーツジャーナリスト

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こやま のぶひろ

出版社、編集プロダクション勤務を経て、2007年に独立。近年はプロ野球を中心とした取材・原稿が多い。『実は大したことない大リーグ』(江本孟紀/双葉社)、『日本人投手がメジャーで故障する理由』(小宮山悟/双葉社)、『野村の「監督ミーティング」』(橋上秀樹/日本文芸社)などの書籍を手掛ける。現在は楽天の松井稼頭央選手の書籍(ベースボール・マガジン社より今春刊行予定)を制作中。
 

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