業界異端児・大阪ガスの「オール電化」切り崩し大作戦!

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業界異端児・大阪ガスの「オール電化」切り崩し大作戦!

確かに、目算違いはあったかもしれない。今年4月に2号機、5月に1号機が稼働、残る3号、4号機が今秋稼働し完成となる、大阪ガス・泉北発電所のことだ。総額1000億円を投じ、10年かけて進めてきた同社の旗艦発電所で、発電能力110万キロワットは原子力発電1基分に相当。非電力会社系の国内発電所では最大級の規模を誇る。

だが、原料のLNG(液化天然ガス)価格が、ここ数年想定外の急騰に見舞われ、期待したほどの価格優位性を発揮できない。原油やLNG高騰の影響を受けにくい原子力や水力発電を持つ分、今は電力会社が有利だ。コジェネ(発熱電源)に続く泉北立ち上げで、工場などの大口電力顧客を電力会社から一気に奪い取るという、大阪ガスの狙いは出鼻をくじかれた。外部からは同社の電力事業に懐疑的な声も出始めている。

新・泉北発電所の実験 低コスト発電を徹底追求

「それでも、泉北で利益は出る」。尾崎裕・大阪ガス社長は断言する。

立ち上げ時、逆風は確かにあった。だが、新発電所は今後につながる力を秘めている、という自負は揺らがない。それは、電力会社からすれば、“非常識”な低コスト発電に泉北は徹したからだ。新発電所は、LNGタンクが林立する同社の泉北製造所内の狭い敷地に建つため、新規の土地取得費用はゼロ。LNGも隣から直供給。当然発電コストが下がる。

原料が石炭だった時代、石炭を使った化学メーカーを、大阪ガスは本気で目指していた。だから、この会社は早くから原価意識を身につけていた、と尾崎社長は話す。原価を下げ、競争を仕掛けることは、大阪ガスにとっては常識の範疇なのだ。

転んでもただでは起きないしたたかさも、同社の真骨頂だ。都市ガス原料のLNG転換時、LNGで発生する冷熱を活用し立ち上げたのが冷凍食品事業。そこから派生したキンレイは、今もコンビニの冷凍麺でおなじみだ。LNG転換による余剰人員発生の窮地を逆転の発想で切り抜けたのだ。

電力事業、特に成長余力の高い海外発電事業(IPP)の拡大にも、粘り強さは生かされている。合計118万キロワットに達する同社の海外IPPだが、そのほとんどがマイナー出資止まり。110万キロワット規模、かつ低コストの泉北発電所を単独で開発・運営することで自信を深め、次は主導的立場での出資、さらには開発段階からの事業参画に一歩近づける。泉北でのノウハウを海外に移植することも可能になるのだ。

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