業界異端児・大阪ガスの「オール電化」切り崩し大作戦!

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いちばんカネをかける家庭用燃料電池の開発

海外IPPの権益売りが増え、権益価格が下落に転じている今、大阪ガスの電力事業にとって世界同時不況は逆に追い風だ。3月に発表した中期経営計画では、泉北完成で300万キロワットに達する国内外発電規模を、2013年度末に400万~450万キロワットに拡大すると宣言。事業利益も、現在の20億~30億円から、「200億円程度を目指す」(松坂英孝企画部長)とブチ上げた。

大阪ガスがもう一つ期待をかけるのが、6月に販売をスタートする家庭用燃料電池「エネファーム」だ。標準家庭の6~7割の電気を賄い、発電で出る熱を給湯などに利用、総合エネルギー効率(発生したエネルギー量のうち利用可能な割合)は7~8割と高い。CO2排出量も3~4割削減できる。燃料電池普及で1世帯の都市ガス使用量は2倍に膨らむとの試算もあり、ガス会社にとっては、電力会社のオール電化攻勢に対抗する最終兵器でもある。

家庭用固体高分子形燃料電池(PEFC)では、自動車用の5000時間に対し9万時間(=10年間に相当)の高耐久性が要求され、大阪ガスも装置メーカーなどと協力して開発に当たってきた。04年には4万時間(=4~5年間に相当)のセル(発電装置)耐久性を初めて確認したが、その後の開発は難航した。

大きな転換点をもたらしたのは、ある一大決心だった。技術のブラックボックス化にこだわる開発パートナーメーカー4社を何とか説き伏せ、04年に各社から「技術融通」の同意書を取り付けたのだ。一方で、性能とコストダウンの同時追求をやめ、製品性能確立をまず優先。その後コストダウンに集中するという2段階方式に切り替えた。これが開発加速を決定づけた、と1999年からPEFC開発を率いる同社の田畑健マネジャーは打ち明ける。

大阪ガスの研究開発費は年間100億円。そのうち「いちばんカネをかけている」(尾崎社長)のが燃料電池であることからも、この商品への入れ込み具合がよくわかる。

東京ガスの基盤が巨大な首都・関東圏なのに対し、大阪ガスはその6割にすぎない関西圏が地盤。本業の都市ガス事業は営業エリアが法律で縛られているため、大阪ガスのハンディは大きい。そこで同社は、新技術や新分野を果敢に攻め、「各種の枠を突破してきた」(業界関係者)。営業利益では東京ガスと互角の勝負を演じ、非都市ガス事業というくくりなら、逆に大阪ガスが東京ガスをリードさえしている。エネファームの先輩格である家庭用発電機器「エコウィル」(都市ガスを燃焼させエンジンを回して発電)では、5万件以上の販売実績を誇り、東京ガスに大きく水をあけている。


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