児童虐待、なぜ「再三の通報」が生きないのか どうすれば悲劇の連鎖を止められる?

拡大
縮小

「加えて、通報を受けて対応する警察官も、必ずしも児童虐待に精通しているとは言えないため、確認不足などにより、児童虐待を見過ごしてしまう場合もあるでしょう。

今回のケースでは、市も警察も児童虐待に関する情報は有していたものの、それぞれが問題なしと判断し、警察から児童相談所にも通告がなされませんでした。

こうした要因により、児童相談所等に、虐待の判断の前提となる情報が届かず、結果的に児童虐待を見過ごすという事態となっています」

「警察だけではなく、児相への通報も併せて行って」

悪い流れを断ち切るためには、どうすればいいのだろう。

「児童虐待に関する通報を取得したら、各機関における問題性の有無の判断にかかわらず、各機関で情報を共有できるようにすべきです。特に、警察は捜査にあたると同時に、速やかに児童相談所へ通告する必要があります。また、一般の方の心構えとしても、警察への通報だけでなく、児童相談所への通報も併せて行うよう心がけていただけると間違いは減るでしょう。

なお、児童虐待などの相談にあたる『少年サポートセンター』の警察官だけでなく、一般の警察官についても、より一層、児童虐待の実態の理解を深める必要があります。

そして、警察・児童相談所・行政での情報共有を推進した上で、児童相談所が迅速に対応できるよう人的・物的に充足させることが、今回のような被害女児を救うことにつながります」

榎本 清(えのもと・きよし)弁護士
埼玉弁護士会所属。2005年弁護士登録。児童虐待案件で、児童相談所対応、審判対応などをした経験をもつ。離婚・相続問題、交通事故紛争等の一般民事から、労働問題まで幅広く対応している。
事務所名:西風総合法律事務所

 

弁護士ドットコムの関連記事
もし痴漢に間違われたら「駅事務室には行くな」 弁護士が教える実践的「防御法」
ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?
「ご自由にお取りください」ラーメン屋でネギを大量に食べたら「出禁」こんなのアリ?

 

弁護士ドットコム
べんごしどっとこむ

法的な観点から、話題の出来事をわかりやすく解説する総合ニュースメディアです。本サイトはこちら。弁護士ドットコムニュースのフェイスブックページはこちら

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT