NHKは本当に変わったか--実力か、民放各社の衰退か?(上) 

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「視聴者目線」が生み出した好循環の流れ

その点NHKは、視聴者から徴収する安定した受信料収入が経営を支えている。商業放送ではないため、視聴率をそれほど気にする必要はない。企画段階から時間をかけて、良質の番組作りに打ち込めるのだ。しかも地上波2、衛星3とチャンネル数が多く、報道、教養、娯楽など幅広いジャンルの番組を放送できることも視聴者を引きつける理由だ。前出の番組制作会社社長は「今の民放は視聴率を追えば追うほど、視聴者が離れていき、視聴率を追わないNHKを見る人が増えるという皮肉な状況に陥っている」と語る。

もちろん、NHKの視聴率上昇は“棚ぼた”だけではない。もともと、NHKの番組の質の高さには定評があったのに加え、制作方針にも変化が見られる。キーワードは福地茂雄会長が就任当初から掲げる「視聴者目線」。その筆頭が昨年、大ヒット番組となった大河ドラマ「篤姫」だ。

幕末モノは当たらない--。これが、篤姫以前の大河ドラマのジンクスだった。その理由について、「篤姫」の佐野元彦チーフ・プロデューサーは、「戦国時代などに比べ、幕末は数え切れないほどの参考資料がある。作り手が知識におぼれてしまい、マニアックになりがちだった」(佐野氏)という。歴史番組としての質は高くなるが、ドラマとしては視聴者の共感が得にくかったのだ。

そこで、佐野氏が追求したのは、視聴者のわかりやすさだ。「1年間で一人の女性が成長していく姿を描くことに専念し、視聴者の気持ちが乗るように計算した。わかりにくいものは、思い切って捨てたことがよかった」と分析する。

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