太陽電池で大ヤケド、"名門"トクヤマの失態 社運を懸けた事業で1200億円の減損損失

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赤字の責任を取り、社長ら役員が報酬を今年6月まで3~5割返上。経営再建に向けて、昨年7月に公表した中期経営計画を見直し、再建プランを早期に策定するという。

減損は帳簿上の資産価値を減じる会計処理で、今回の巨額赤字が資金繰りに直接影響するわけではない。とはいえ、2期連続の巨額赤字により、バランスシートは急激に悪化。2年前に約2300億円あった自己資本の大半が吹き飛び、今年3月末には600億円弱に、自己資本比率も2年前の約4割から1割台にまで下がる見込みだ。

横田社長は今後の経営再建について、「マレーシア以外の事業はきちんと利益を稼いでいる。こうした既存の事業で国内にある設備を最大限に活用して、会社全体の資産効率と収益力を高めていく」とコメント。急激に悪化した財務の再建も重要課題と位置づけ、追加的な資産売却や資本増強策も検討する。

償却負担ゼロでも操業赤字が続く

太陽電池用シリコンの需要は増えているが、アジア勢の参入などで供給過剰状態にある(写真はイメージ)

経営再建を進めるうえで大きな焦点となるのは、巨額損失を招いた太陽電池用シリコン事業の今後だ。今回、第2期プラントも資産計上額のほぼ全額を減損処理したため、今後の同事業は年間50億円規模の減価償却負担がなくなり、身軽にはなった。

それでも、同プラントにおける太陽電池用シリコンのキャッシュコスト(償却負担を除く生産コスト)は現在、1キログラム当たり20ドル弱。つまり、償却負担がゼロでも、現在の市況では依然として逆ザヤ状態の操業赤字が続く。

「今回の減損やプラントの改良、稼働率の引き上げによって、2017年度には1キログラム当たり12ドル程度までコストが下がり、単年度ベースで黒字化できると見ている」と横田社長は話す。が、計画どおりにいくか、なお不透明だ。

成長の牽引役になると期待してマレーシアでの太陽電池用シリコン事業に巨費を投じ、市況暴落で大きな傷を負ったトクヤマ。経営再建の行方は、巨額減損後の同事業の動向にかかっている。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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