ニチイ学館、介護最大手が赤字転落する理由 中堅中小事業者の倒産は過去最高に
介護事業で最大手、ニチイ学館が今期業績予想を大幅に下方修正した。11月10日に発表した2016年3月期の連結決算予想によると、通期の経常利益は、従来の61億円の黒字から、24億円の赤字へと転落する。同社の連結経常赤字は、2001年3月期以来、何と15年ぶりのことである。
中国事業の本格稼働遅れの影響もあるが、最大の要因は、人手不足による、主力である介護事業の不振だ。高齢化によって介護需要の増加が続く中、今期は介護人材の不足によって利用者数の減少が続くという、異例の事態となっていた。今年4月、支店体制の見直しによる人材確保策を打ったが、その効果発現が想定より遅れたため、今回の下方修正につながった。
人手不足は業界全体の課題になっている。が、上場企業の介護事業大手で赤字転落となるのは、ニチイ学館だけ。なぜ同社だけがここまで厳しいのだろうか。
訪問介護が主力ゆえのハンデ
一つの理由は、他社が有料老人ホームなどの施設系やデイサービスなどの通所系を主力としているのに対し、ニチイ学館が訪問介護を中心としている点にある。
施設系や通所系なら、未経験の新人介護職員でも、先輩のサポートを受けながら即戦力になりやすい。だが、利用者宅内で、1人で介護サービスを行うことも多々ある訪問介護では、より熟練した人材が求められる。そのため、人材確保のハードルがより高くなる。
もう一つ、大きな理由がある。それは、自社の介護資格講座の受講生を人材の供給元としていたが、この受講生が昨今、大幅な減少となっていたことだ。
きっかけは2013年4月に実施された、介護資格の制度変更である。従来の介護資格の入り口となるホームヘルパー(2級)が、初任者研修というものに代わった。受講の総時間は変わらないが、学ぶ内容が高度になったほか、試験に受からないと資格取得も不可能になった。これに伴って、介護資格講座のコストもアップし、受講費用が従来の10万円弱から約16万円に値上がり。その途端、受講生の減少が始まった。
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