太陽電池で大ヤケド、"名門"トクヤマの失態 社運を懸けた事業で1200億円の減損損失

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太陽光発電の世界的な普及により、同用途のシリコン需要は拡大が続いている。太陽電池用は半導体用ほどの高い品質(純度の高さ)が要求されない分、技術参入障壁が低く、競合も多い。だが、電力代などのコストが安いマレーシアで大規模生産すればコスト競争にも勝ち残れると判断、巨額投資に踏み切った。

しかし、この大型投資が会社の屋台骨を揺るがす事態を招く。最大の誤算は、想定以上の市況下落に見舞われたことだ。

プラント建設を決めた当時、太陽電池用シリコンの需給が比較的タイトで、相場は1キログラム当たり60ドル前後だった。が、中国勢などの相次ぐ参入で供給量が急増。2011年後半から市況は急落し始め、第1期プラント完成直前の2012年後半には20ドルを割り込む水準にまで下落した。

この価格では完全な逆ザヤ(製造コストより販売価格が安い状態)で、作れば作るほど赤字が膨らんでしまう。そこでトクヤマは、第1期プラントで生産するシリコンを半導体用に変更。もともと、第1期分はグレードの高い半導体用も生産可能な最先端の析出装置を採用していたため、用途の変更は可能なはずだった。

ところが、海外メーカーから調達したこの析出装置に重大な欠陥があり、高純度の半導体用シリコンの生産ができずに時間だけが経過。結局、2013年2月に完成した第1期プラントはまったく売り上げが立たないまま、2014年度決算でほぼ全額を減損。同年度は600億円を超える最終赤字に転落し、プロジェクトを推進した当時の社長が引責辞任に追い込まれた。

第2期プラントも減損強いられる

トクヤママレーシアが運営する第2期プラント。2014年秋に営業運転を開始したが、市況下落で赤字操業が続いている

新体制で経営の建て直しを進める同社に重くのし掛かったのが、2014年に完成した第2期プラントの存在だった。

こちらは太陽電池用シリコンの専用生産設備だが、市況の低迷で稼働当初から完全な逆ザヤ状態。コスト低減のためにさまざまな改善策を講じたが、現在の1キログラム当たり13ドル程度の市況では赤字操業の解消メドが立たない。結局、第2期プラントについても、2015年度決算でほぼ全額を減損処理せざるをえなくなった。

1月29日の会見で、横田浩社長は「価格下落が止まらず、計画との乖離が看過できない状況になった」と説明。そのうえで、「株主や投資家をはじめとするステークホルダーの皆様に、多大なご心配とご迷惑をおかけしたことをお詫びしたい」と謝罪した。

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