オバマ政権もゴーサイン、「再生医療」デッドヒート

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 コリンズ博士は10年ほど前、米国国立衛生研究所の所長を務め、ベンチャー企業を率いるクレイグ・ベンター博士との間で、ヒトゲノム(人間の全遺伝情報)の解読競争を繰り広げた、その人だった。ヒトゲノム完全解読を目指した「国際ヒトゲノム計画」は、もともと1990年前後に日本の研究者が主唱し、日・米・欧の研究機関が国際協力で取り組んだ。が、官民とも国を挙げてバイオ産業の研究開発に血道を上げる米国や英国の陰に隠れ、ヒトゲノム解読に対する日本の貢献度は5%程度にとどまったともいわれる。

00年6月、ベンター博士と共にホワイトハウスへ招かれたコリンズ博士は、クリントン元大統領のヒトゲノム解読競争の終了宣言を間近で聞いた。その同じ部屋で、今度は再生医療の振興を米国の国策に掲げるための式典が開かれたというのだ。

「ヒトゲノム解読終了宣言のときも、英国のブレア前首相は(衛星通信で)参加したのに、日本は蚊帳の外だった。今回の式典にも、日本からは僕が呼ばれただけ。iPS細胞の研究では、日本も1割や2割はしっかりとした貢献がしたい」

山中教授はそう話すが、10年前を知る日本のバイオ研究関係者には、再生医療に対するオバマ政権のゴーサインは、まさにデジャビュ(既視感)のように思われたことだろう。

もちろん、どの国で開発されようと、医療技術は本来、誰の役にでも立つはず。ただ、難病の代名詞・がんの治療一つ見ても、画期的な新薬や高精度の放射線治療などは、米国での実用化から日本で利用可能になるまで、5~10年のタイムラグがあるのが普通だ。日本では今でもヒトES細胞の研究に厳しい制約があるなど、この10年でバイオ研究の環境が大して向上したわけでもない。

iPS細胞の基礎研究を実際の応用につなげていくには、日本でもES細胞を含めた再生医療研究のインフラ整備が不可欠といえそうだ。

(週刊東洋経済)

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