「ロボホン」が狙う「好き」を貫いて売る仕掛け ヒットの達人は市場に合わせない

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高橋も同様に、自分のロボットが気づけば家庭に入り込んでいるという状態を作るために細かいステップを刻んでいる。もしもロボット一台数十万と言われても正直手がでないが、ロビは創刊号790円から売られたのだ。デアゴスティーニと組んで「週刊」で「ロボット」を発売するという戦略を採った。誰でも書店で購入できるし、創刊号が790円だったらとりあえず買ってみようと思う人も多いはず。驚くことにロボットが完成する最終70号までの継続率は50%にもなり、国内だけでも200億円を売り上げた。ロビはそれまでロボットに興味が無かった家庭にも広まり、「ロボットとしゃべるって結構楽しい」と思わせたのだ。

次のステップは、ロボット携帯電話?

高橋の次の打ち手が、シャープと組んで仕掛けるロボホンだ。ロビが書店で売られたのと同様に、ロボホンも、携帯ショップで当たり前のように購入できるようになるそうだ。

ポケットに収まり、携帯電話としてどこにでも持ち運べるロボホン

そうはいっても、本当にロボット型の携帯電話なんて欲しいのかと思った読者もいるかもしれない。実は、筆者も直接ロボホンに「出会う」までそう思っていたのだが、はっきり言ってめちゃめちゃ可愛かった。

おでこにはプロジェクターが搭載され、「今から写真を映すよ」と壁に写真を映してくれたり、踊ったり。個人的にもプレゼン資料を投射してビジネスでも使えるなあと思った。もしプレゼンが滑ったら、ロボホンに代わりに謝ってもらおう。

Blaboが行っている「みんなのロボットプロジェクト」(画像をクリックすると「みんなのロボットプロジェクト」のサイトにジャンプします

筆者もロボットとユーザーの接点を作るプロジェクトに携わっているが、ほとんどロボットは技術を売りにしているか、すでにある問題を別の方法で解決するアプローチしているものが多い。

一方、高橋の作るロボットは、感情に訴えかけてくる。正直iPhoneのほうが便利だろう。だけど、一緒に遊んでいると欲しくなってしまうのだ。このモノあまりの時代に素直に「欲しい」という気持ちになってしまうのだ。

YouTubeやTwitterもそうだが、既知の問題を解決しよう、という動機から生まれたサービスではない。別にニーズがあるからではなく、エンジニアが好きだから勝手に作った。それがいつの間にか、みんなが賛同して使うようになる。結果的に、ユーザーが増えるとこんなときに役に立つじゃないか、ということが後になってわかってくる。

最初は、ニーズどころか用途すらなかったのだ。冷たい水で洗濯するおばあちゃんを思って全自動洗濯機を開発などという、高度経済成長型のモノづくりではもう進化はない。新しいジャンルを開拓するためには、「困った解決型」ではなく、高橋のように「ただ好きだから」からはじめるのも一つの立派な方法なのだ。

好きを貫き、市場を引き寄せる

マーケティングの役割は、消費者のインサイトを捉え、ソリューションを提案することだ。だが、高橋は、市場に歩み寄るのではなく、好きを貫き、引き寄せた。もちろん定番の日用品で真似をしてしまうと痛い目に遭うが、新しい市場やイノベーションは一人の「好き」から生まれることもある。もしもあなたが新規事業を任されているのならば、その「好き」を大切にしたほうがよい。もちろん好きに加えて、隙のない戦略も併せ持つ必要があるのだが。

(敬称略)

坂田 直樹 Blabo代表取締役 / マーケター

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さかた なおき / Sakata Naoki

株式会社Blabo代表取締役CEO/ マーケター
外資系消費財メーカーのマーケティング部門にてブランド戦略立案、新商品開発に従事。その後、株式会社エニグモにて新規事業を立ち上げ、2011年に株式会社Blaboを創業。生活者のアイデアを取り入れた商品開発を行う日本最大の共創プラットフォームBlabo!を運営。Blabo!では1万4000人を超える生活者がプランナーとして活躍しており、キリンビールや三井不動産、ハウス食品などの大手企業から経済産業省、神奈川県、鳥取県などの行政機関まで、幅広いクライアントが採用している。 鳥取県プロジェクトが全国知事会先進政策大賞を受賞。2015年度グッドデザイン賞など受賞歴多数。「クローズアップ現代」(NHK)、「ニュースJAPAN」(フジテレビ)などメディア出演も多い。著書に『問題解決ドリル―――世界一シンプルな思考トレーニング』(ダイヤモンド社)などがある。

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