岩田聡・任天堂社長--日本人が面白いと思うものは世界で見ても「面白い」!
--アイデアをひねり出すために、社員のモチベーションを上げるような仕組みは?
人が何を面白がってくれるのかについて考えずにはいられない人が増えれば、会社は有利ですよね。ただ、それは個人の才能や資質で生まれる部分があります。でも企業文化の持つ意味も大きく、考え続けている人たちに囲まれていると、新人もそのDNAに自然と染まるという循環がある。任天堂はその中で動いているのではないかと思います。
面白いことを考えて口にしたら周りの人が興味を持ってくれて、その何げない思いつきが商品化されて世界中に届くことを経験できる。そういう組織と、アイデアを口にしても消えていく組織の違いです。結局、意思決定をする人が現場からの提案に興味を持って見続けて、本当に面白いものは取り上げるということが大切なのではないでしょうか。
--イノベーション(技術革新)は努力して起こせるものですか。
大きな変化に対して世の中が反応してくださるかどうかは、最後は天の時に恵まれているかどうかで決まると思います。要はタイミングです。
Wii は評価をいただくことができましたが、それは「任天堂が革新的なコントローラーを生み出したから」と言ってくださる方がいます。もちろん「Wii リモコン」という発明なしに現状がないことは確かです。が、同時に、もし大画面の薄型テレビが普及していくタイミングと合わなかったら、これほどWii は遊んでいただけたでしょうか。家庭で個人の各部屋にテレビが行き渡った後に、薄型テレビが居間に入った。すごくいい視聴環境ができたので、家族みんながそこに集まるようになった。しかも、商品が薄くなったので、テレビの前でリモコンを振るスペースができたのですね。