岩田聡・任天堂社長--日本人が面白いと思うものは世界で見ても「面白い」!

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 では、それを読み切ってWii を作ったかというと、そんなことはないのですよ。大画面テレビが普及するから、「これからのゲームは高精細だ」という予測はあった。ただ、絵がきれいになっただけでゲームから離れたユーザーが戻ってくるとは思えないので、任天堂はあえてその路線を行かずに別の方向に動いた。ここは理屈です。けれども、薄型テレビの普及がWii リモコンへの支持を高めると予測できたかというと、そうではないのですね。

世の中の過去のイノベーションと言われるものを見ても、全部が理詰めでできているとは思えない。努力の向きは正しかったけれども、それがボンと爆発的に世の中を変えたのは、人の力の及ばない部分がかみ合ったからではないでしょうか。努力は必要条件かもしれないけれども、絶対条件ではありません。 

そもそも、任天堂って変な会社の名前ですよね。「天に任せる」と書きますから。昨年の株主総会で株主の方から社名の由来を聞かれまして……。そんなこと総会の想定問答に書いていない(笑)。困りましたよ。ただ、「人事は尽くせると思ってはいけない」という話を昔、山内から聞いたことがありました。人事を尽くすというのは「もうこれ以上やることはない」との意味ですが、努力は際限がない。一方で、結果が出るかどうかは天の時に恵まれるかどうか次第。だから、結果が出たら幸運に感謝しましょう。結果が出なかったら自分たちに何が足りなかったか考えましょう。それが任天堂に込められた意味ではないですか、と総会で答えました。

--成功体験の中で、どこまでが自分の力だったのかという分析は?

それは分けられないと思うのですよ。そもそも、最近成功という言葉で形容していただけることが増えて、光栄なことだと思うと同時に、その言葉が社内に与える影響をとても心配しています。社内で成功と言うな、と。海外法人のプレスリリースに「success」と書いてあると、その言葉を削ってくれと指示します。自分で自分を成功と言ってどうする。そういうところから会社は自滅するんだ、と言うわけですよ。

--ソフト専業メーカーと比べて根本的に発想の違いはある?

そんなことはないと思います。ただ、任天堂は新しい機種の開発をハードとソフトのスタッフが共同で行うので、そこがソフト専業のメーカーにはない特徴です。

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