ANA、「A380」だけじゃない大勝負の行方 JALの"足かせ"が外れる前に全方位で攻勢

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傘下のLCC、バニラエアは補完的な役割が期待されている(撮影:尾形文繁)

同地域ではほかにも、自社便で昨年、マレーシア・クアラルンプール線を13年ぶりに再開した。今年9月からは成田―プノンペン(カンボジア)線を就航させる。

中南米地域では、2016年度下期に成田―メキシコシティ線を1日1往復で開設する見込みだ。2010年にJALがバンクーバー経由の直行便から撤退して以来、日系エアラインの運航はなく、メキシコのアエロメヒコ航空が週4往復で運航するのみ。ANAは現地支店を昨年設置し、準備を進めてきた。

自動車メーカーなど日系企業の進出が著しい同国へのビジネス需要を狙う。中南米の他国への就航に関しても、長峯取締役は「機材性能の向上を見ながら、まず直行便で飛べるところを検討したい」と意欲を示した。

フルサービスキャリアであるANAでは採算を確保できない地域をカバーするのが、傘下のLCC(格安航空会社)、バニラエアの役目だ。

5年後の生産量(座席数×運航距離)を現在の3倍にする計画で、グアムやサイパンなどのリゾート路線で日本人の観光需要を、中国本土や沖縄発着の国際線で訪日需要を取り込みたい考えだ。同社の現在の拠点は成田のみ。今後は関西や沖縄などの拠点化も考えられる。

来年3月までにJALを引き離せるか

今のうちにどれだけJALを引き離せるか(撮影:尾形文繁)

中期経営戦略と同時に発表した2015年度第3四半期(4~12月)決算は、営業利益で過去最高を更新するなど、目下の業績は好調だ。十分なキャッシュフローが生じているうちにできるだけの拡大を図ろうという姿勢が、改めて鮮明になった。

2017年3月末には、公的資金で経営再建したJALの新規投資を国土交通省が制限してきた、いわゆる「8.10ペーパー」が期限を迎える。ライバルの“足かせ”が取れる前に、ANAは少しでも差をつけておきたいところだろう。

航空会社はテロや疫病などのイベントリスクと常に隣り合わせ。JALの破綻に象徴されるように、供給過剰による値崩れも経営に打撃を与える。大勝負に打って出た形のANAの中期経営戦略は、はたして吉と出るのか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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