ANA、「A380」だけじゃない大勝負の行方 JALの"足かせ"が外れる前に全方位で攻勢
同社のホノルル線は現在、1年を通して搭乗率が90%を超えている。そのために、マイレージと交換する特典航空券がホノルル線で予約できない事態となり、利用客から不満の声が上がっていたという。
ここに通常の機材の倍近い座席数を有する超大型機を導入すれば、限られた発着枠でも拡大できるという計算だ。
とはいえ、こうしたA380の活用法も後付け的な印象がぬぐえない。ANAが今、この機材の導入を決めた背景には、スカイマークの再生支援をめぐる駆け引きが見え隠れする。
最終的には、昨年8月の債権者による投票でANA陣営によるスカイマーク支援が決まったわけだが、その過程で大口債権者だったエアバスに対し、ANAは将来の機材発注の可能性を伝え、協力を求めた。「スカイマークをめぐる出来事が(A380導入の)検討を加速させたのは否定できない」と長峯取締役も認める。
こうして決まった超大型機の購入ではあるが、いくら需要が多い路線であっても、一般的な旅客機の倍近い超大型機の座席を埋めるのは容易ではない。
特に、ホノルルは2014年に就航60周年を迎えたJALの主力路線の1つ。トロリーバスの運行など日本人向けの独自サービスを充実させており、ホノルルマラソンへの協賛など閑散期の需要創出にも取り組んできた。その牙城を崩すのは、ANAといえど容易でない。
世界各地で空白地帯に攻勢
今回の中期戦略でANAが仕掛けた“大博打”は、A380だけではない。世界各地の空白地帯に攻勢をかけ、さながら全方位戦略といった構えだ。
東南アジア地域では、ベトナム航空と資本・業務提携を結び、コードシェア(共同運航)やマイレージ提携、空港業務の受委託を進める。同社は現在JALと提携しているが、今後提携を解消する可能性が高い。コードシェア便がANAに移れば、日本―ベトナム線のシェアは一気に逆転しそうだ。
「東南アジアでは各国の最大手の航空会社と提携関係を構築できたが、ここで終わりではなく、まだまだ展開を模索したい」(長峯取締役)
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