2016年消費のキーワードは「過剰品質」 元日経トレンディ編集長があげる3つのカギ
以上の時代背景を考慮して、北村さんは2016年のヒット商品の条件として「過剰品質」、「必然性」、「あなたさま仕様」という3つのキーワードを挙げている。それぞれどういう意味なのか、順に説明していこう。
古くから日本に根付く「過剰品質」は、強みになり得る
第一のキーワードは「過剰品質」。そこまでやるか!?という予想を上回る驚きを人々に与えるものは、嬉しさとともに「人に語りたい」という思いが刺激され、財布の紐が緩む傾向にある。
「『過剰品質』は時として、日本のものづくりにおいて悪い部分のように言われてきました。しかし、それは一部のデジタル系ガジェットに限ったものであり、その他の分野では逆に日本ならではの強みになり得ると思っています。そもそも日本においては、古くから過剰品質を愛で、大事にする文化が根付いています。例えば、日本料理で汁椀を開けると、蓋の裏に蒔絵が施されている…というような演出がそう。2015年のヒット商品で言えば、洋服にシミがついたらすぐに洗いたいというニーズに応えた、世界最小のハンディ洗濯機『COTON』や、文具各社が発売した『折れないシャーペン』、ハチミツが垂れにくい『くるりとハチミツスプーン』などが挙げられます」
このキーワードで今年話題を集めそうなものとして北村さんが挙げるのは、愛知ドビーという名古屋の鋳造メーカーが作る「バーミキュラ ライスポット」だ。
「この会社は、2010年に鋳物ホーロー鍋『バーミキュラ』を発売し、最長15カ月待ちの大ヒット商品になりましたが、これはその大ヒット鍋の周りをさらにIH熱源で包んだもの。バーミキュラが持つ熱効率の良さ、気密性の高さという特徴に加えて、火にかけることなく煮炊き、炊飯ができるという優れもの。料理が苦手な人ほど活用範囲の広い調理器具であり、家庭料理の世界をガラリと変える可能性を持った商品だと感じています」
なぜ世に出たのか?ルーツが明確な商品に人は惹かれる
第二のキーワードは、「必然性」。なぜ、その商品を世に出したのか、作り手の意思が明確であるものは、消費者の納得感と共感性を呼ぶからだ。
「このキーワードは特に、前述した『六次産業』において当てはまります。六次産業のものにヒット商品は少ないと申し上げましたが、その理由は『なぜ、この商品を出すのか』が明確でないケースが多いから。だから、地方発の六次産業系商品と言えばジャムやジュース、ドレッシングばかりになってしまうんです」
その中、「なぜこれを出すのか?」を追求し、2015年に大ヒットしたのが三重県のトマト農園「デアルケ」が発売する「極上200%トマトジュース」。低温で7時間以上煮詰め何度も漉して作られた、うま味が凝縮したトマトジュースで、500ml・3,480円と高額ながら飛ぶように売れている。普段使いではとても手が出ない値段だが、消費者がオカネを最大限有効活用しようと考え抜いた結果、「これなら」と納得のうえ、プレゼント用途や記念日に購入しているという。