2016年消費のキーワードは「過剰品質」 元日経トレンディ編集長があげる3つのカギ
「この流れを踏襲するものとして私が今年注目しているのは、鹿児島県南さつま市にある笠沙漁港が手掛ける『さつまからすみ』。からすみは、ボラの卵巣を加工したもの。通常ボラは河口や内湾に生息するため臭みが強く、卵巣以外は捨てられることが多いのですが、笠沙で水揚げされるボラは外海を巡ってくるため臭みがなく、身が刺身で食べられるほど。その卵巣で作られたからすみは濃厚な香りと味、ねっとりとした触感で得も言われぬ旨さ。まさに『ここでしか獲れない名産』であり、笠沙のものを買う意味がある商品だと、誰もが納得するはず。このように、消費者が商品のルーツに納得できることが、ヒットを生む必須条件になると思っています」
「あなただけに」と提供される商品に価値を感じる
そして第三のキーワードが「あなたさま仕様」。ターゲットを消費者1人にまで絞り込み「あなたのための商品」と提供されれば、誰もが心惹かれ、価値があると感じるからだ。
2014~2015年にヒットし、いまも品薄状態が続いている時計ブランド「Knot(ノット)」は、時計本体が約20種、ベルトが約200種もあり、それを自由に組み合わせて自分だけの時計が作れることで人気を集めた。ムーブメント、ガラス板、ベルト、そのほとんどがメイドインジャパンで、ベルトは京都の組み紐、栃木のレザーなどバラエティーに富んでいる。
「このキーワードで2016年に注目されそうなのが『テレファーム』というリアル農業ゲーム。農場や牧場のシミュレーションゲームはいくつもありますが、このゲームはプレイヤーが農作物を育てると、実際に同じものがリアルな畑で栽培され、ゲーム上で収穫期を迎えると現物が送られてくるというもの。バーチャルながら、まさに“自分が育てた、自分だけの農作物”が送られてくる楽しさ。すでに話題になりつつあるゲームですが、今後さらに注目が集まるでしょう」
「今話題の『電力自由化』もこのキーワードに当てはまります。4月1日の電力自由化を機に新規参入する『新・電力会社』は通信会社、ガス会社などさまざまありますが、各社ともエネルギーとインターネット、通信などを組み合わせたプランを提案する見通し。1社でライフラインをまとめることで、お得にサービスを提供し、新規顧客を取り込もうとしています。いかにユーザー一人ひとりに沿った、リアリティーのあるプランを提供できるかが各社の腕の見せ所でしょう」
以上の「過剰品質」、「必然性」、「あなたさま仕様」という3つのキーワードから考えると、「2016年は大企業よりも中小企業にチャンスが大きい年になる」と北村さんは見ている。