感染拡大する「ジカ熱」について知っておくべき事実 アメリカ大陸で最大400万人が感染する恐れ

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[28日 ロイター] - 世界保健機関(WHO)は28日、先天的に頭部が小さい「小頭症」との関連が指摘されている感染症のジカ熱が「爆発的に拡大」しており、アメリカ大陸で300─400万人が感染する恐れがあると警告した。

蚊が媒介するジカ熱に関して知っておくべき事実を以下に挙げる。

●ジカウイルスは、雌のネッタイシマカによって媒介され、ヒトに感染する。ジカ熱のワクチンはまだない。デング熱やチクングンヤ熱、黄熱病もこのネッタイシマカによって媒介される。

●ジカ熱の症状は通常、発疹や発熱、筋肉・関節の痛みなどで比較的軽く、1週間程度で治まる。症状が現れないことが多く、感染しても入院治療が必要になることはまれだ。

●ジカウイルスは、ウガンダのビクトリア湖近くにあるジカの森に生息するアカゲザルから1947年に初めて発見された。WHOによると、1952年にウガンダとタンザニアで初めてヒトへの感染が確認された。

●ジカウイルスは蚊が繁殖しやすい熱帯地方で見つかっている。これまでアフリカやアメリカ大陸、南アジアや西太平洋地域で流行が確認されている。

●WHOによると、ジカ熱感染が確認されたアメリカ大陸の国・地域が23に増加。最も感染が拡大しているブラジルでは、感染者数は今後150万人に上る可能性があるという。

●WHOの米地域事務局である汎米保健機構(PAHO)は、カナダとチリを除くアメリカ大陸諸国でネッタイシマカの生息が確認されており、ジカウイルスもそれらの国々すべてに拡散される可能性があるとしている。

●PAHOによると、アメリカ大陸でジカ熱感染による死亡例は今のところ確認されていない。しかしすでに疾患を持つ人が、死に至るような深刻な合併症を伴うケースはいくつか報告されているという。

●米保健当局者によると、米国では現在2つのワクチン候補が挙がっており、年末までにヒトでの臨床試験を開始する可能性があるという。ただし、ワクチンが普及するまでは数年かかる見通し。

●ブラジルの研究者やWHOは、ジカ熱と小頭症の関連性が高まっているとしている。ブラジル保健当局によると、昨年のジカ熱流行と同時に小頭症の新生児も増加しており、その数は9月以降で約4000人に上る。

●感染者の推定8割が発症しないことを考えると、妊娠した女性が感染しているかどうかを判断するのは困難だと言える。ブラジル当局による研究は、妊娠初期での感染が小頭症のリスクが最も高い可能性を指摘している。

●ジカ熱の感染率が最も高いのがブラジルで、次がコロンビア。そのほか、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、メキシコ、パナマ、パラグアイ、プエルトリコ、スリナム、ベネズエラでも流行が報告されている。

●コロンビアの保健省は、同国ではすでに1万3500人がジカ熱に感染しており、感染者数は今年70万人にも上る恐れがあるとしている。サントス大統領によれば、小頭症の赤ちゃんが500人生まれる見通しだという。同省はジカ熱によるリスクを回避するため、女性は妊娠するのを6─8カ月遅らせるよう勧告している。

●ジャマイカでは感染はまだ確認されていないが、同国の保健省は女性に対し、向こう半年から1年は妊娠しないよう勧めている。エルサルバドルの場合は、2018年まで妊娠を避けるようアドバイスしている。

●今月に入り、米疾病対策センター(CDC)は妊婦に対し、感染が確認されている中南米やカリブ海諸島の14カ国・地域への渡航を避けるよう警告している。

●ジカウイルスがヒトからヒトへ性感染した可能性が1例あるが、PAHOは性的接触が同ウイルス感染の手段であるかどうかを確認するにはさらなる証拠が必要だとしている。

●PAHOによると、ジカウイルスが母乳から赤ちゃんに感染するという科学的根拠は今のところないという。同ウイルスは血液を通して感染し得るが、これはまれな伝達メカニズムだとしている。

●WHOによれば、2007年以前にジカ熱の大きな流行がなかったため、感染によって引き起こされる合併症についてはほとんど知られていない。長期的な健康上の影響は依然不明である。ウイルスが妊婦の胎盤を通過して、小頭症を引き起こすのかどうかということも明らかになっていない。

●2013─14年に仏領ポリネシアでジカ熱が流行した際、保健当局は、免疫システムが神経系の一部を攻撃する珍しい疾患「ギラン・バレー症候群」の患者が異常に増えたと報告。ブラジル当局も同症候群の増加を報告している。ジカウイルスの潜伏期間や、蚊に媒介されるデング熱のような他のウイルスとどのように作用し合うのかも分かっていない。

*27日に配信した記事に情報を追加して再送します。

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