日経平均1万6000円からの反発は本物か? 世界の株式市場が注視する米FOMCの声明

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2月上旬までに1万8500円以上に戻れば、その後の調整があっても持ち直しも早い。一方、注意が必要なのは、昨年9月29日の安値(1万6901円)と同時に、昨年来安値(1万6592円)をすでに下回ったことです。それによって、昨年来高値(2万0952円)を付けた6月からの調整局面は二段下げ目に入ったことが確認できました。ですので、1万7800円すら超えられないと自律反発の域を脱することができず、底割れリスクは今と同じように残ることになるとみています。

しかし、底割れにつながる強列な売りは一巡した可能性も高いのです。少し難しい話になりますが、個人投資家が主体の信用取引の買い残高と、機関投資家が主体の裁定取引に伴う現物株の買い残高の合計(以下、仮需)が減少傾向にあります。この残高が多ければ多いほど理論的には将来の売り圧力が増していることになり、株価が調整局面になれば信用の買い方の投げ売り(追証含む)や、裁定取引を解消する現物売りなどが市場への強い売り圧力となり、さらに下げ幅を拡大させる要因となります。

2013年以降の残高の推移をみると、おおむね仮需がピークから20%程度(2013年以降の急落局面における平均)減少すると株価の下落が一巡する傾向があります。昨年12月からの下落局面では、仮需は直近発表ベースで5兆5413億円とピーク(6兆8247億円)から18.8%程度減少しました。このデータは1月15日時点ととうことで、遅行性がある点には注意が必要ですが、先週(1月18~22日)も大幅安になる場面があったことから、仮需の残高はさらに減少している可能性が高く、売りが一巡したバロメータになります。

海外の長期資金の動向では、産油国を中心とした政府系ファンドによる日本株売りがクローズアップされています。ただ、相場が下げているときは売り手の実体は不明でも、そういう話が市場に出回るころには売りはほぼ終えているケースも少なくありません。

日米主要企業の決算発表で見直し買いも

この歴史的な下落相場の中で、株価がバリエーション面からみた割安感が強くなっているとすれば、市場が落ち着けば株価は上昇します。株価を1株当りの利益で割って求めるPER(株価収益率)は、米国のS&P500社ベースで昨年11月6日の17.8倍程度から1月21日現在で15.3倍程度まで急速に低下。同じようにTOPIX(東証株価指数)のPERも11月20日の15.5倍程度から1月21日現在で12.8倍程度まで低下しました。

米国では決算発表が本格化。今週から国内企業の決算発表も本格化します。主力企業の決算発表で先陣を切った安川電機の第3四半期累計(4~12月)の営業利益は前年同期比23.3%増で着地。ロボットは中国市場の落ち込みがみられたものの、欧米を中心に旺盛な需要が継続したことから全体では好調に推移したようです。

一方、2016年3月期通期の連結営業利益を従来予想の365億円から355億円(前期比12.6%増)に下方修正しました。市場予想の370億円も下回り、翌日の株価は大幅に下げましたが、相場全体が弱気に傾く中で材料出尽くしのような比較的健闘した動きをみせたような気がします。これから発表される決算がよほど悪い内容でない限りは、見直し買いが相場を支える可能性が高いといえそうです。

1月24日は暦の上では「満月」でした。「満月」「新月」の前後は相場の分岐点になりやすいことで有名です。昨年の中国ショック時の9月29日の安値は「満月」の翌日でした。「満月」に近い22日の日経平均の1000円近い上昇は、相場を再び「明るく」してくれるサインになったでしょうか。

東野 幸利 国際テクニカルアナリスト

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ひがしの ゆきとし / Yukitoshi Higashino

DZHフィナンシャルリサーチ 日本株情報部長。証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA)、国際テクニカルアナリスト連盟(IFTA)教育委員、日本テクニカルアナリスト協会理事なども務める。
 

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