「貨物新幹線」は本当に津軽海峡を走るのか 青函トンネル貨物輸送のあるべき姿とは?

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JR貨物のディーゼル機関車。青函トンネルを高速走行するには新たな車両の開発が必要だ

こうした経緯から、2018年をメドに1日1往復の高速運転実現を目指す、という方向性が打ち出された。そのための方策として、新幹線と貨物列車の走行時間帯を分けるという案が採用された。新幹線と貨物列車がすれ違うことはないので、安全面は確保できる。

ただ、貨物列車はトンネル内を頻繁に行き交うので、この方式で高速走行する新幹線の運行本数を増やすには限界がある。そこで、すれ違い時に減速する案と貨物新幹線案も、平行して検討されることが決まった。それが2013年3月のことだ。

WGでは、貨物新幹線について、JR北海道が提唱するTOTをベースに検討する、としている。しかし、TOTにも解決しなければならない課題がある。この方式だと、コンテナ車を台車ごと積み込むため、重量が非常に大きくなる。また、台車が2つ重なるため、重心も高くなる。したがって、高速走行時の安定性や安全性の検証が不可欠なのだ。

2013年3月以降、TOTの検討状況が聞こえてこない中で突如出てきたのが、コンテナ新幹線だった。この方式はコンテナ車の台車を積み込まない分、重量が軽くなるし、重心も低くなる。ただ、コンテナがむき出しの状態になるので、すれ違い時の風圧は心配だ。コンテナを積み替えるためのクレーンも開発しないといけない。

議題にならなかったコンテナ新幹線

18日のWGで主に議論されたのは、2018年春から始まる1日1往復の高速運転に向けての課題整理。新幹線が高速走行をする前に線路上に支障物がないかをチェックする確認車の開発について、検討が行われた。

あらかじめ用意されていた議題がすべて終了したのは、17時ちょうど。会議は16時から18時までの予定だ。ここからいよいよコンテナ新幹線の話題に移るのか、と思ったら、そのまま閉会となってしまった。

「てっきりコンテナ新幹線について議論すると思っていた」。会議終了後、出席していた国交省の幹部に声をかけたら、意外な答えが返ってきた。

「JR貨物が勉強を始めた、とは聞いている。でもまだアイデアの段階で、この場で議論する性質のものではない」。まず、WGの方針として明記している「TOTの実現可能性」をしっかりと見極め、コンテナ新幹線はその後の話だという。

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