なぜGMは転落したのか R・ローウェンスタイン著/鬼澤忍訳

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なぜGMは転落したのか R・ローウェンスタイン著/鬼澤忍訳

よくある自動車業界本と思うと間違う。むしろ副題の「アメリカ年金制度の罠」が内容を正しく反映している。ほぼ3分の1のページを占める第1部「誰がGMを殺したか」で、年金・健康保険問題を照準にしてGMのいま一つの病巣を痛烈にえぐる。このほど退任したワゴナー前会長の「私たちが手にしている結果にとって、歴史の影響はきわめて大きかった」の言葉に、抜き差しならぬその苦悩ぶりがよく表れている。

2000年にワゴナーは47歳でCEOに就任。当時から、ウォール街のアナリストはGMを「車輪に載った年金事務所」と評し、「ショールームつき医療友の会(HMO)」というジョークまであったという。

基準の甘い健康保険と莫大な年金給付の負担は、民主党の集票マシン全米自動車労組(UAW)との妥協と無策の中で、経営の重しとなる歴史が豊富な取材の積み重ねで描かれる。

GMはこの「あり地獄」から果たして抜け出せるか。

日本経済新聞出版社 2100円

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