JASRAC一極支配に挑むエイベックスの勝算 音楽著作権ビジネスは本当に儲かるのか
現時点でエイベックス系2社の管理楽曲は10万曲と、JASRACの326万曲に遠く及ばない。2014年度の使用料徴収額もエイベックス系2社の約20億円に対し、JASRACが1125億円。この圧倒的な差は、60年以上にわたる、JASRACの集中管理体制に起因するものだ。
1939年に国策の一環として設立されたのが、JASRACの前身である大日本音楽著作権協会。団体の成立根拠となった仲介業務法には、小説、美術などの分野ごとに管理団体は一つと定められていた。JASRACは長年にわたり、音楽分野で国内唯一の著作権管理団体として、君臨してきたのだ。
デジタル化が開けた風穴
状況が動いたのは2000年代に入ってから。デジタル技術により着メロなど新サービスが次々と生まれる中、旧態依然としたJASRACによる集中管理体制が疑問視され始めた。
2001年には仲介業務法に代わって著作権等管理事業法が施行。文化庁長官による許可制から登録制に変わったことで、著作権管理への新規参入が可能となった。ただ、JASRACの壁は厚く、十数社が参入したものの、大半が廃業同然の状況に追い込まれた。
分厚い壁に風穴が開いたのは2015年4月。放送局とJASRACの結ぶ契約は独占禁止法違反に当たるかが争われ、最高裁において「JASRACは他業者の参入を妨害している」との判断が下された。これと前後し、JASRACの大きな収益源だった放送使用料が、今年4月以降、利用された楽曲数に応じてJASRACとネクストーンで使用料を分け合う、新しい徴収方式に変わることになった。
音楽著作権に詳しい関西大学の三浦文夫教授は「デジタル化が進み、利用楽曲データに基づいた公平な徴収・分配ができるようになった意義は大きい」と評価する。
ただし、JASRACの使用料収入の約2割を占める「演奏分野」の著作権管理に、ネクストーンは当面対応できない。デジタル技術で利用実態が捕捉できないためだ。JASRACは16支部に200人超を配置し人海戦術で把握しているが、ネクストーンの当初の規模では演奏まで管理するのは難しい。つまり、今後もしばらく、楽曲利用の全分野で管理体制を整えているのはJASRACだけである。
JASRAC側は「ネクストーンが設立されたからといって特段、新しい取り組みを始めることはない」と、至って冷静。エイベックスの投じた一石が業界全体に大きなうねりをもたらすのは、まだ先の話になりそうだ。
(「週刊東洋経済」2016年1月23日号<18日発売>「核心リポート03」を転載)
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