経団連がベンチャー創出に力を入れる理由 

大企業にとって「敵」ではない

ベンチャー・エコシステムの構築については、「日本再興戦略」の中で、政策の柱のひとつとして掲げられており、すでに多くの施策が進行中ですが、新規に取り組むべきものについては、今後、具体的な検討が進められる予定です。特に、省庁の縦割りの打破による一貫したベンチャー政策の推進は、まさに今、政府内部で検討が進められています。

また、政策要望とあわせて、産業界自体のオープンイノベーションへの取り組みとして、ベンチャー企業を「CSRの一環として支援」したり、「研究開発部門の下請け」と扱ったりするのではなく、新事業創出、経営戦略上の「対等なパートナー」としてとらえ、連携を推進するとの意気込みも掲げられています。

このために、

・経営層の積極的な関与、失敗を許容する環境づくり
・連携の幅を広げるための大企業側の体制構築
・将来事業戦略・研究開発戦略との連動、産産連携の推進

 

などが呼びかけられています。

提言だけでなく、具体的な行動も起こっています。起業・中堅企業活性化委員会の活動として、昨年11月から「東大・経団連ベンチャー育成会議」が動き出しました。参加メンバーは、東レ、オムロン、KDDIなど10社で、大学側は、東京大学産学連携本部(渡部俊也本部長)です。

この活動では、すでにかなりの蓄積がある東大と企業の共同研究成果を活用するベンチャーの創出や、大学と企業の技術シーズを組み合わせるベンチャーの創出を目指します。また、大学発ベンチャーと大企業間の投資や調達などの連携強化の方策も検討します。産学連携を通じたベンチャー企業の創出・育成の「枠組み」づくりのための活動を目指しています。

また、地方との連携に関しては、福岡市を中心とする「スタートアップ都市推進協議会」と連携し、首都圏を中心とした大企業と地方ベンチャー企業のマッチングに向けた共催イベント「ジャパン・スタートアップ・セレクション」を開催するなど、自治体との連携が始まっています。

大企業のイノベーション創出効果に期待

ベンチャー・エコシステムの構築には、先駆的な大企業経営者の英断や、尖がった新事業担当の活躍は必要ですが、社会としてより大きな運動が広がることが重要です。

経済界のエスタブリッシュメントの代表である経団連が、ベンチャー創出に本腰を入れ始めたことは、非常に大きなインパクトがあります。実は、筆者もこの検討の会合でベンチャー政策の議論をする機会をいただいたのですが、参加者が真剣に、過去の取り組みの問題点や具体的な行動について話していたことが印象的でした。

経団連の旗振りに応じ、経営層、組織体制、経営戦略に関する改革が、継続して、効果的に実施されるならば、日本のベンチャー・エコシステムが大きく前進するとともに、大企業のイノベーション創出にも大きな効果があると考えています。

「最も強いもの、最も知的なものが生き残るわけではない、最も変化に対応できるものが生き残る」というチャールズ・ダーウィンの名言は、ベンチャー経営に関して、よく引用される言葉です。ビジネス環境の変化に応じ機動的に意思決定をして、新しいことに挑戦する。今、大企業においてもまた、変化に機動的に対応する動きが加速してきました。大企業とベンチャーとの連携やオープンイノベーションの運動がさらに拡大することを期待しています。

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